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2017年1月 5日 (木)

第257回 謹賀新年

沖縄辺野古での新基地建設をめぐる訴訟において、最高裁は弁論すら開かずに国の言い分を全面的に認めました。1審からわずか3ヶ月での最高裁判決はいかにも、新基地建設を早急に進めたい国の意向に沿ったものに思えてなりません。私には、安保条約を違憲と判断した1959年3月の砂川事件1審判決に対して、米国の意向から跳躍上告をした上で、翌年の安保改定に間に合うように12月にスピード判決を下した最高裁の姿が重なって見えます。この国の司法は、いつまでたっても政治部門と米国の尻を追いかけているだけの情けない存在なのかとため息が出ます。

もう法律家の上がりの地位まで上り詰めたのだから、何も怖がらずに良心に従い、憲法と法律にのみ従って判断すればよいものを何を怖がるのでしょうか。本土や政府のために仕事をするのが自分たちの役割だと考えているのでしょうか。少数者の人権保障など教科書に書いてあるだけの絵空事であり、結局は政治的多数に従って、無難な判断をしながら任期を全うすればいい。またそうすることが、任命権を持っている政府から司法の独立を護ることにつながるのだと考えているのでしょうか。

しかし、今は多くの国民・市民が憲法を知らず、最高裁の存在意義も理解していないからいいようなものの、これから皆が憲法を学び、自立した市民としてものを考えるようになったら、こうした最高裁の態度は、国民の信頼を失い、かえって大きなダメージになってしまいます。

昨年、沖縄高江でヘリパッド建設反対運動をしている沖縄の市民に、警察官から「ぼけ、土人が」という発言がありましたが、これを「差別とは断定できない」と政府は擁護し続けました。「反対運動をしている人々からの暴言もあるではないか」とか、「言論弾圧に通じる」といって問題をすり替える人もいます。市民と権力の関係、表現の自由の意味、憲法の存在意義がまったく理解されていない証左です。

米軍基地が沖縄本土復帰前に次々と沖縄に移転され、本土からは一部地域を除いて米軍基地の存在は見えなくなりました。日米安保条約の恩恵だけ受けて、その負担を沖縄に押しつけてきた本土の人間が、新基地建設反対運動を沖縄のわがままと決めつけて批判する、その身勝手さに驚くとともに、沖縄の歴史に無知であることへの恥の気持ちを持たない知的怠惰に愕然とします。そんな中でオスプレイが墜落事故を起こしたことに抗議をした副知事に対して、米軍の沖縄責任者は「パイロットは賞賛されるべきだ。むしろ感謝するべきだ」と逆ギレしたそうです。米国では住宅街のど真ん中の基地など法律上許されません。占領軍意識丸出し、沖縄差別の元凶を見る思いです。

米国による差別、そしてそれよりも愚劣な日本政府による差別。戦争は差別や弾圧とともにやってくるといわれます。「戦争なんてまた被害妄想が始まった」と笑い飛ばす人もいます。本当にこれが私の被害妄想で終わり、数十年後に「そういえば昔、馬鹿な弁護士が無意味な声を上げていたなあ」と笑い話になることを心から願っています。

沖縄は日本の最先端です。最先端で起こっていることは、いずれ本土にもやってきます。未来の本土の姿がそこにあるという想像力を働かすことができるかどうか、法律家や行政官には法律を使いこなす力だけでなく、そうした想像力、共感力も必要です。こうした力が新しい未来を切り拓いてゆく創造力につながっていきます。

どんな分野の仕事でも最先端に関するものは、どうしても風当たりが強くなります。批判や反対の声も大きく聞こえてきます。ですが、最先端を走る少数派には風当たりが強いものだと覚悟しておいてください。今、法律を勉強することは、少数派かもしれません。でもだからこそ、未来を見据えて自分の理想とする法律家や行政官を高い志をもってめざすことには大きな意義があるのだと思います。

新安保法制違憲訴訟も全国14カ所で提訴され、今後さらに20カ所以上に増えていく予定です。原告も5000人を超え、弁護団も1000人を優に超えていきます。「合憲判決が出たらどうするんだ、どうせ負けるに決まっている」と何もしないで批判するだけの専門家も少なくありません。それぞれ考えがあってのことだとは思いますが、私はそのように始める前から負けると決めてかかるような敗北主義には与しません。結果が保証されていなくても、自分の信念に従って必死で努力を続けることなしに壁を乗り越えることなどできない。このことを私は司法試験の勉強の過程で学びました。それを今、実践しています。

明日の自分は今日の自分が創る。日本の未来は今を生きる私たち市民一人ひとりが創り上げる。その気概をもって今年一年、真剣勝負で頑張りたいと思います。今年もよろしくお願いします。

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