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1995年10月

1995年10月 1日 (日)

第2回 平成7年度論文本試験の受験生へ

 お疲れさまでした。いろいろと迷い苦しみながらもここまで勉強してきた自分自身をまずは誉めてあげてくださいね。真剣にこの試験に立ち向かってきたあなたの思いが答案の中に、必ずや反映されるはずです。

 私も論文試験のときには本当にひどい目に遭いました。というのは、2日目の刑法で問題文の読み間違いをしてしまい、終了5分前になってそのことに気づいてしまったのです。目の前が真っ暗になって背中に冷や水をかけられたようなぞっとする感覚を初めて体験しました。「ああ、これでもうだめだ。」という思いとそれまでのつらい勉強の日々が走馬燈のように頭をめぐりました。「走馬燈のようにとはこういうことなんだなあ。」と妙に感心したことを覚えています。とにかく書き直さなくてはと思っても情けないことに手が全く動かないのです。なんとか手を机にたたきつけてやっと書ける状態にして、もうそこからは無我夢中で書き直しました。試験終了の鐘も全く気がつかずに書きまくっていました。そしてその後が悲惨でした。もうショックで食事も水も全く喉を通らず、翌日の訴訟法も最終日の選択科目も(当時は7科目あり試験は4日がかりで行なわれていました。)とにかくあきらめずに書ききることだけで精一杯でした。試験が終わった時点ではもうだめだと思っていました。それでも結果的には受かっていました。

 ようするに主観的な出来不出来はあてにならないということです。失敗したと思っている人も気を抜かずに勉強を続けておくことが肝心です(もちろん少し休んでからですけれどもね)。合否は因果の流れでもう決まってしまっています。今更じたばたしても始まりません。ならばとりあえず合格していることを前提に口述用の勉強をしておきましょう。


 私は自分の塾で本当に受験生のためになることを正直にアドバイスできることを何よりもうれしく思っています。前職の立場では何かと拘束があり自由にものが言えませんでしたが、もう大丈夫です。「辰巳の○○先生の講座は是非受けた方がいい。」とか「Wセミナーの○○講座がいいよ。」とかもちろん「LECの○○もいい。」(最後じゃまずいかなあ。何か言われちゃいそう。)とか「そろそろ基本書を読んでみたら。」などとフリーの立場でアドバイスできます。

 真の受験指導は個別指導だと思っています。一人一人の合格方法はみな違うのですから、その受験生の個性に合わせた勉強方法を見つけられるかがポイントなのです。一律に「あれはだめ、これは絶対」というものではありません。論点ブロックの暗記だけで合格する人もいれば基本書を読まなくてはいけない人もいるのです。それを適切にアドバイスすることこそが受験指導のプロの仕事だと考えています。

 私はこの塾をこのように受験生一人一人の個性を大切にしてそれぞれの思いを実現できるような場にしたいと思っています。個別指導という点では法的思考のトレーニングを重視したゼミを中心に指導します。費用など受験生の負担は出来るだけ軽くなるように努力していきます。皆さん一人一人を個人として尊重し受験生である前に一人の人間として尊重してお手伝いしていくつもりです。


 私たちは何らかの意味があって今この時代に、この地球に生まれてきました。必ずや意味があるはずなのですが、どのような意味があるのか私たちには知らされていません。それを一緒に考えたいと思っています。

 受験時代は決して、本当の自分の人生を迎えるための準備などではありません。今、日々の勉強において悩み苦しみ、楽しみ喜ぷ、そのことこそがあなたにとって人生の本番なのです。ならば、今この瞬間を本気で生きようではありませんか。真剣に生きぬこうではありませんか。何のための受験なのか、自分は合格してどんな法律家になるのか、どのようにして社会のために貢献するのか、そんな夢をともに語ろうではありませんか。

 私はその人の価値はその精神の気高さにあると思っています。精神の気高さはあなたが日々どのように考え、どのように行動したか、どのように生きているか、そして何のために生きているのか、その人生の目的によって決まると考えています。決して、周りの人々や社会の評価、たまたま生じた合否の結果などで決まるものではありません。今のあなたの目標は司法試験合格でしょう。でも人生の目的ではないはずです。目的と目標を取り違えることなく日々を真剣に生き抜いてほしいと思います。それがあなたをより高いレベルに引き上げてくれるものと確信しています。

 合格まで何年かかるかは人それぞれでいいじゃないですか。1回の受験で合格することもあります。もう大丈夫絶対合格するといわれて、それからさらに3度目の正直で合格することもあります。でもだから見ることができた風景もあるはずです。どちらもかけがえのない価値がある生き方なのです。堂々と胸を張って過ごしてください。

 私はよく自分にも言い聞かせているのですが、人はその人が考えたようにしか成り得ません。そして何をしたかでなく、どう考えたのかですべてが決まってしまう場合もあると思っています。

 自分はどうありたいのか、自分で像を創りその像を今、この瞬間から生き抜くこと。そうすれば間違いなくあなたは輝くと私は確信しています。

 強い意識を持ってほしい。本当にそう思います。


 さて、なんだか偉そうなことを言ってしまいました。皆さんにしてみればまだ論文試験の結果が気になっているんじゃありませんか。私も経験があるのでよくわかります。でも、頑張ったんだからいいじゃないですか。自分自身に0Kを出してあげてください。

 過去も0K、未来も0K、そして一番大切なのは現在をOKと肯定することです。これは今の自分をすべて受け入れるということに他ならないので大変なことですが、すべてがここから始まります。すべてを受け入れそして新たな第一歩がこの瞬間から始まるのです。今日は未来のあなたにとって大切な最初の一日であることを忘れないでください。

 明日の自分は、今日の自分が創る。私の好きな言葉です。

 それでは、これからの勉強、頑張ってくださいね。

 最後まで読んでいただいてどうもありがとう。
(※この手紙は七月二十五日に実施した本試験会場で当塾が配布したものに修正を加えたものです。)