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2001年8月

2001年8月 1日 (水)

第72回 勝者の常識

 少し前にイチロー選手の作文が話題になったことがあります。具体的な数字で将来の目標を明確に掲げているからです。小学校6年のイチロー少年がプロ野球選手になるための目標を明確に語っています。しかも、具体的な数字が何度も出てきて、いかにも明確なイメージができあがっていることを伺わせるような内容です。「3年生の時から今までは、365日中、360日は、はげしい練習をやっています。だから一週間中、友達と遊べる時間は、5時間~6時間の間です。・・・ドラフトのけいやく金は一億円以上が目標です。」

 勉強に際して、毎日何問択一を解くとか、論証をいくつ見直すとか、目標を具体的に数値化していくべきだということはこれまでも何度かお話していることです。そして、具体的なイメージを強く持つことが目的達成にとって必要不可欠であることも繰り返し言っていると思います。イメージトレーニングはもはやプロの世界では常識です。それを勉強に生かさない手はありません。その意味では、こうしたイチローの目標設定と自己管理は参考になるところです。

 ですが、私がやっぱりなと思ったのは、彼が、自分が天才だと言われることに対して次のようにインタビューに答えているのを見たときです。

「自分は天才なんかじゃない。人は何をして自分を天才だというのだろうか。何もやっていないと思っているのかなあ。人と違うことをやるという意味なら天才かもしれないけれど、それに向けて準備しているもの。」つまり、やるべきことを誰よりもやっているからこそ結果を出せる。それだけであり、それを天才とは言われたくないというようでした。

 彼は、アメリカのメジャーリーグで使われているボールをすでに日本で個人的な練習では使っていたことについて(日本のボールよりすべりやすいそうです)、「そんなの4年前から使っているよ。アメリカに行くことを考えてから。」と答えています。

 目標を決めて、それに必要なことを分析して準備する。それが人よりも数段、緻密で徹底しているのです。

 ゴルフの世界にタイガー・ウッズという怪物がいます。これはニューズウィーク誌に載っていたことですが、スポーツ界のスーパースターが共通して指摘することは、練習の重要性です。「高いレベルの選手は、みんな素質がある。でも、タイガーは誰よりも練習する。だから勝てる。」これはウインブルドン優勝9回のナブラチロワの言葉です。「一本のスーパーショットの陰には、練習で打った無数のショットがある。」ということです。そしてほとんどの選手はウッズのように練習の虫にはなれないと記者が指摘します。それは練習のつらさではなく、退屈さに耐えきれないからだというのです。

 これらの指摘も、どこの世界でも何かを成し遂げようとする場合には共通して妥当することのようです。択一の過去問の重要性がわかっていながら、それを新鮮な気持ちで毎回、しっかりとこなすことは至難の業です。法律もある程度やると飽きてきますから、そこで、新しいことに手を広げて、結局、本当に必要な基礎練習がおろそかになるのです。素振りを何百回、何千回やったか、そして基本がどこまで自分の身体が覚えた常識になっているか、それが本試験での自信につながり、結果につながるということなのです。
 この夏の過ごし方が勝負です。