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2003年10月 1日 (水)

第98回 闇の中で

 今進んでいる法科大学院制度の構築の中で圧倒的に弱い立場にいるのが受験生です。ですから制度を作る強い立場の者は、十分な配慮を求められます。ですが、先日発表された大学入試センター実施の統一試験の追試に関しては、そうした配慮が全くみられません。

 途中でルールを変えることは、そのゲームに対する信頼を大きく損ねます。真剣にゲームに挑戦していた者が馬鹿をみるようなことだけはしてはなりません。同一期日に同一問題で実施されるべき統一試験のルールが突然、変更されました。ですが、法科大学院協会設立準備会においても、メンバーの大学教員から、追試を設定した経緯として、出願期間が短かった、広報期間が短かった、受験者が当初の見込みよりも少なかったという理由が説明されたようです。こうした理由で不利益と不安を受験生に与えて何も感じない大学入試センターと多くの大学教員とは何なのでしょうか。

 この法科大学院構想は一貫して受験生不在のまま進められました。最も利害関係のある受験生の意見をまともに聞くこともなく、現行制度や大学の問題点を真剣に洗い出すこともせず、権力を持つ者の意のままに進められてきました。当事者である受験生不在で始まったこの制度は、こうして受験生を無視して試験が実施され、開始後も学生のニーズも市民のニーズも無視され、蓋を開けてみたら教員がてんでばらばらにやりたい放題となって終わる危険性が大です。市場原理が働かない怖さをまざまざと見せつけられます。現行試験も今後どのような推移を見せるのかまったく不透明です。

 ですが、そうした闇の中でも、私は諦めたら負けだと思っています。どんなに逆風が吹こうが実績をあげることが肝心なのです。皆さんなら立派な法律家になることです。私の立場なら、実務において市民のニーズにしっかりと応えられる法律家を育成していくことです。市民のニーズに応え、学生のニーズに応えた法科大学院で実績を出す。実績こそすべてです。

 新司法試験に合格することは当然の前提であり、その上で将来、最高裁判決を変える上告趣意書を書くぞという気にさせるような刺激的な講義を受け、依頼者の利益を守るために勝てる実務技術を身につける。そして、学生もお客さんではなく、教員や事務スタッフと対等の当事者として参加して、理想の法科大学院を作ろうと必死に努力する、そうした理想の学舎がどうしても必要なのです。

 そのためには、教育効率を上げなければなりません。ITもいいでしょう。しかし、あくまでも教育は人と人のぶつかり合いです。火花が散るほど議論して議論して、そして実践する。実践を伴う議論を繰り返しながら新しいものを生み出していくのです。実務家、研究者、教育者、そして学生がそれぞれのプライドをかけて、経験に裏打ちされた主張をし、それをお互いに壊し合って、さらに新しいものを創りあげていく。市民のニーズに応えようとするが故の壮絶なバトルが展開されてこそ、まったく新しい教育システムである法科大学院ができあがるのです。

 出来レースのような結果が見えている制度が作られようとしている中で、こうした真剣勝負に挑むことはますます敵を作ることになります。さまざまな面で格好の標的となるでしょう。ですが、叩かれても、叩かれても、そして最後の一人になっても、私は闘い続けるつもりです。

 皆さんが各自のフィールドで、今一度真剣勝負に挑むことを期待しています。