« 2003年10月 | メイン | 2003年12月 »

2003年11月

2003年11月 1日 (土)

第99回 腰を据える

 勉強していると、いろいろな情報に惑わされて本当に自分がやらなければならいことが見えなくなることがあります。確実な情報は数えるほどしかなく、そんな中で何を信じて良いのかわからないという状況に遭遇します。たとえば現行司法試験なら論証パターンや問研の答案を覚えて完璧にしたのに不合格だった。自習室や図書館を使って朝から晩まで勉強しているのに不合格だった。何が原因なのかわからない。法科大学院に方向転換しよう思うのだが、現行試験対策の答練と法科大学院対策の兼ね合いがむずかしい。法科大学院入試では、今は何を中心にしたらいいのか、小論文か自己評価書か、法律科目試験対策か、面接対策か。迷っているうちに時間ばかりが過ぎていく。司法書士試験でも憲法が入り、記述式の傾向も変わり、司法試験からの方向転換組が多くなっている現状で、どのように勉強したら良いのか。

 こうして迷ってしまったときには、これまでの勉強の仕方が中途半端になっていなかったか、そしてこれからやろうとしていることが中途半端になる危険性がないかをしっかりと見極める必要があります。最後のつめが甘くて、徹底できずに負ける。どの世界にもよくあることです。もうちょっと頑張ればよかった、もうちょっと時間があれば対策できた、もうちょっと深くやっておけばよかった。この「もうちょっと」の壁は本人が認識している以上に厚いのです。そしてこの壁が突破できない理由の一つが、もうこれくらいでいいだろうと妥協することです。

 ある雑誌で名棟梁が大工の心意気を語っていました。その心意気が甘えない、楽をしない、妥協しない、だそうです。私は法律家は一種の職人だと思っていますから、この大工さんの心意気はそのまま勉強にも当てはまると感じました。「もうちょっとだった」と言い訳をせずに腰を据えて頑張ってみることが必要なのです。とかく受験指導校で勉強すると要領を追い求めがちです。もちろん無駄を省いて要領よく勉強することは不可欠です。ですが、それ以上に大切なことは基本を徹底することです。腰を据えて、徹底することが大切なのです。基本を理解する、記憶する、正確に表現する。こうしたことが徹底できていないと、結局は応用して考える力も身に付きません。そして考えるときにも徹底して考え、頭から湯気がでるほど考えるのです。

 何か腰を据えてやってみることです。定義を一言一句の意味するところを納得して正確に記憶する。基本書を短期間にじっくりと読み込んで自分なりの体系のイメージを創りあげる。そのほかにもいろいろなことができるはずです。もうちょっとやればよかったと後で後悔しないように徹底するのです。もちろん、範囲を広げたらこんなことはできません。あくまでも絞り込んでメリハリをつけた上で徹底するのです。

 現行試験でいくならいく。法科大学院でいくなら迷わない。勉強し始めはむしろ両睨みで行く方がよいでしょう。しかし、ある程度の段階に来たら、迷わず腰を据えて自分の目指す方向に向かって全力投球すべきです。その決断が遅れ迷えば迷うほど中途半端になってしまいます。

 そしてそのように腰を据えて勉強するときに一番大切なこと。それは志だと思います。高い志こそ自分を高め、自分の個性になるべきものです。法律家として生きる原動力になりうるものです。迷ったら今一度、自分自身の志を確認し、その上で腰を据えてやるべきことを徹底してみてください。きっと道が開けるはずです。