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2005年4月

2005年4月 1日 (金)

第116回 立憲派

今年の5月3日で伊藤塾/(株)法学館は創立10周年を迎えます。1995年という混乱の年に生まれ、その後、司法制度改革、法科大学院創設と法曹養成をめぐる環境がめまぐるしく変わる中を、なんとかここまで来ることができました。多くの塾生、理解ある大学教授、実務家の方々の支援があってのことです。本当に感謝しています。

 起業しても10年続かない会社がほとんどの中、よくここまで来たなと感慨深いものがあります。創業期には足下をすくわれそうになったこともありました。ですが、ここまで努力してきてやっと企業としての体力もついてきて、制度改革の波を乗り越えて、次の目標に向かっていくだけの確固たる基盤ができあがりました。そして将来、どの方向へ進むべきかも明確に見えてきました。

 いくつかの試練を乗り越えてくると、やはり力と自信がつくものだなとあらためて実感します。私自身も24年間にわたる受験指導の中で、叩かれれば叩かれるほど、しぶとくしなやかな力を身につけることができました。その意味ではいわゆる批判勢力にも感謝しなければなりません。短期的には失敗と評価されるような出来事であっても、長い目で見れば、実は、大いに自分自身の成長に貢献してくれているわけです。さまざまな出来事をどう受け止め、そこから何を学び取り、どう活かしていくかによって、将来の自分がまったく違ってくるのだと本当に実感します。

 理念をもった教育を事業として成り立たせることは、そう簡単ではありません。伊藤塾は他の指導校のように法律系以外の各種資格を手広く扱っているわけではありません。法律実務教育一筋でまさにそのエキスパートとしてここまでやってきました。合格をめざす学校でありながら、「合格後を考える」という理念には批判もありました。しかし、合格後にどのような法律家になりたいのか、どのような行政官になるのかを意識しながら勉強しようというコンセプトは幸い多くの方に受け入れてもらうことができました。筋の通らないことが多すぎる今だからこそ、愚直なまでに正論を通し、青臭く理想を訴え続ける人間も必要だと考えています。

 実は株式会社法学館の就業規則の冒頭に「法学館憲法」というものを入れてあります。会社の創立も憲法記念日ですから、ずいぶんなこだわりようなのですが、自分たちにも一定の歯止めをかけることが必要だと考え、10年前にこの憲法を作りました。

 先日、新聞の取材を受けたときに、自分を憲法にちなんでOO派と命名してほしいと頼まれました。たとえば、護憲派、壊憲派といった具合です。私は自分を立憲派と命名しました。近代文明社会にあっては、権力を持つ者、強い力を持つ者は憲法によって歯止めをかけられなければならないという立憲主義の思想に思い入れがあるからです。

 この立憲主義の思想は、人間の不完全性に着目した、まさに謙虚さの現れだと思っています。知性による合理的自己抑制のたまもので、近代の人類の最大の発明だとも思っています。私たちもそれを大切にしたいのです。

 伊藤塾では、これまでの10年でやっと国内における法律実務家養成の基盤づくりを成し遂げました。どのような制度になろうとも法学基礎教育の必要性はまったく変わりませんから、私たちの役割もますます重要性を増すことになりそうです。これからが第2ステップです。私も次の大きな目標に向かって、さらに努力をし続けます。また、これまで以上に、多くの方々の協力がなければ何もできません。その意味でもさらに謙虚に、誠実に、青臭いことを訴え続け、実行していくつもりです。

 ちなみに法学館憲法第1条には「私たちは常に謙虚でありたい。常に自分がすべての人々、すべての命、すべての事物に生かされていることを自覚し、感謝しつづけることをここに約束します。」とあります。理想と現実は常に食い違いますが、だからこそ、こうありたいと願うのです。