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2006年6月

2006年6月 1日 (木)

第130回 あいさつ

 新司法試験の試験会場に4日間、立ちました。はじめての試験に緊張して臨む受験生を応援するためです。うっとうしく感じた人もいたでしょう。多くの人にはどうでもいい存在だったと思います。ですが、たった一人でも、私の姿をみて安心し、元気が出たという塾生がいてくれたらそれで十分に意味があると思い、立ち続けました。

 「おはようございます。頑張ってくださいね。」と声をかけても無視されます。まったく反応のない人に向かって2時間、声をかけ続けるのはけっこう疲れます。欧米ではまったく見ず知らずの人であっても、エレベーターの中で挨拶をしたり、目が合うと微笑んだりします。飛行機に乗るときに客室乗務員の方が乗客に「こんにちは」と声をかけているのに、日本のビジネスマンはむすっとして無言です。外国人は皆返事をしています。とても不思議でした。試験会場で声かけをしていて、ふと、そのときの様子を思い出しました。

 自分は何のために一人でこんなことをしているのだろうか。みっともないとも思いました。私のことをよく思わない人は、売名行為で営業のためにやっているんだろうと言います。25年間、雨の日も炎天下でも毎年毎年、択一、論文、口述と立ち続けてきました。最近は司法書士試験でも立っています。目の前の受験生に本当に頑張ってほしいと心から願っているからです。
ちょっときれいごとに聞こえてしまいそうですね。でも、本当です。いまさら私は、試験会場で突っ立って顔を売る必要もありません。受験生の皆さんが普段の力を発揮して、法律家としての一歩を歩み出せるように現場で本気で応援したいのです。
 
 昔は、返事くらいしてもいいのにと思ったことがあります。ですが、それはこちらの気持ちの押しつけであって、自分のわがままなんだなと思うようになりました。頑張ってほしいという気持ちは私がその相手に持てばいいのであって、見返りとしての返事を求めるのは間違っています。気持ちが伝わったかどうかの安心感よりも、合格してほしいと強く願う気持ちが持てるかの方が、私にとってはよほど重要なことになったのです。

 言葉は、息とともに声に出されることによって力を持ちます。だから普段から否定的な言葉を使わないようにしています。できるだけ元気に話すようにしています。前向きで肯定的な言葉を使い続けていると自然とうまく回るようになります。これは体験から得て実感しているもので理屈ではありません。だからあいさつをしっかりとするようにしています。講義前にみんなと挨拶をするとスイッチがオンになり「さあ、やるぞ」と自分にも気合が入ります。それと同時に「みんな、今日も頑張れよ」と励ます気持ちを込めています。

 私にとってあいさつは、単なるコミュニケーションの道具ではなく、自分自身に気合を入れると同時に、目の前の人を愛おしみ想うための重要なものなのです。あいさつを通じて、相手に激励のエネルギーが伝わるといいのですが、自分が未熟な故にまだまだなことが多いです。私は、憲法の理念を多くの人に知ってもらいたいと思っています。憲法には愛があると感じているからです。私にとって、憲法の人類愛を多くの人に伝えることと、毎日あいさつすることは等価値です。法律家になっていく皆さんにそんな気持ちを共有してもらうことができれば、とてもうれしいです。また押しつけがましくなってしまいました。