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2007年7月

2007年7月 1日 (日)

第143回 信頼

 気の置けない仲間と温泉につかっているとほんとうに心が和らぎます。過密スケジュールの中ですから、滅多にそんな贅沢はできないのですが、信頼できる仲間と好き勝手なことを言い合ったり、他の客がいない深夜の露天風呂でふざけ合ったりする時間は、私には至福の時です。なぜか。心を許せる仲間だからです。信頼が根底にあるからです。

 人間は信頼を基礎に生きていると思っています。自分だけでは何もできない。だから人の力を借りる。信頼して人に任せる。任された人間はその信頼に応えるために努力する。そうやって誰もが役割を果たしていく。このつながりで世の中はまわっているはずです。

 ですが、最近、その信頼があちこちでくずれています。企業の不祥事は、コムスン、NOVA、渋谷のシエスパ、ミートホープ社の食肉偽装などあとを絶ちません。これらの企業を信頼した市民は金銭のみならず生命健康すら危険にさらされました。

 年金問題ではいかに行政がいい加減か改めてよくわかりました。これまで信頼して年金を納めてきた人だけでなく、これから年金を納めなければならない若者達への信頼を一気に失い、年金制度自体の存立基盤を失いつつあります。

 また、教育関連法案、イラク特別措置法、被害者参加訴訟制度など重要法案が十分な審議もされずに強行採決されていきました。議会制民主主義や政党政治そのもの、つまり立法府に対する信頼も大きく傷つきました。

 そして新司法試験の問題漏洩。試験委員の教授が自分の法科大学院で論文試験に出題される判例を教えていたのですから、法科大学院と新司法試験に対する信頼は地に落ちました。金銭的に余裕のある人しか法曹になれないような制度を作っておいてこのザマです。呆れてものも言えません。えん罪の原因をしっかりと究明しようともしない裁判所、決まってしまったのだからと強引に進めようとしている裁判員制度などと相まって、司法に対する信頼も急速に失われつつあります。

 企業も信頼できず、国のやることも三権ともすべて信頼できない。権力は信頼するものではなく、疑い、批判するものであるとしたとしてもひどすぎます。与党の政治家たちは、こんな国にしておいて、さらに国民に愛国心を強制しようとします。それでも国民はこの政治に従うのでしょうか。3年後に憲法改正を主張する総理大臣を支持するのでしょうか。

 ときどき、この国はとことん壊れないとだめだなと思うことがあります。ですが、そうなったときに一番苦しい思いをするのは、弱い立場の人々です。自分の状況を理解できなかったり、自分で言いたいことも言えない人々です。法律家はこうした人たちの代弁者のはずです。そこで自分に問いかけます。法律家が投げやりになったり、諦めてしまったら誰が青臭く理想を追い求めていくのか。誰が志を高くもって社会をよりよくしようとするのか。

 憲法を知ってしまった者の責任があるはずです。とんでもない時代だからこそ、今を生きる人間として、やらなければならないことがあるはずです。一人一人の役割があるはずです。こうした時代だからこそ、自分の役割と責任を果たすことが必要です。受験生として、市民として、社会人として、やるべきことがあるはずです。私も少なくとも信頼に足りるだけの仕事を精一杯しようと思います。それが私を信頼してくれている仲間や塾生の皆さんに対する責任です。