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2008年5月 2日 (金)

第153号 『違憲判決』

皆さんもご承知のとおり、4月17日に名古屋高裁でイラク自衛隊派兵違憲判決が出ました。航空自衛隊のイラクにおける多国籍軍武装兵士の空輸活動は、他国による武力行使と一体化した行動であり、憲法9条1項に違反することが明確に指摘されただけでなく、平和的生存権が具体的権利であることが示されました。裁判の記録を見るとよくわかるのですが、これは当事者双方と裁判官がそれぞれの信念に基づき威信をかけてプロとしての役割を果たした、真剣勝負の結果です。

これまで自衛隊の存在を違憲と判断した判決は長沼事件一審が有名ですが、今回初めて自衛隊の具体的な活動を違憲と判断したものであり、画期的なものです。しかし、画期的と評価せざるをえない日本の現状が悲しい。仮に今回の事件が最高裁に上告されていたとしても、統治行為論などで憲法判断を避けたであろうことは容易に想像できます。

安保条約の合憲性を巡って争われた砂川事件では一審の違憲判決が出た後、政府はいきなり最高裁に飛躍上告しました。60年安保改定を翌年に控えていたのですが、これが米国の入れ知恵であったことが29日、米国公文書から明らかになりました。米国大使が外務大臣に圧力をかけ、なんと最高裁長官とも密談していたのです。

日本の主権や司法権の独立はどこへ行ってしまったのか。米国の言いなりの日本の姿が、50年前とイラク戦争へ真っ先に飛びついた現在とぴったりと重なります。前に貧困と戦争の結びつきを指摘しました。そこにさらに米国がセットになっているのです。

そして儲けるのは米国の軍需産業。米国では60億円のF15戦闘機をなぜ日本は120億で買う必要があるのか。日本が負担する沖縄駐留海兵隊グアム移転費用のうち住宅建設費がグアム相場で1戸あたり1900万円なのになぜ8000万円も計上されて請求されるのか(法学館憲法研究所ホームページ・森英樹客員研究員「今週の一言」参照)。

愛国を声高に叫ぶ右翼活動家や愛国心教育を国民に強制する政治家がなぜこうしたことに黙っていられるのかまったく理解できません。日本を築いてきた高齢者にもう長生きするなといわんばかりの政策を強行し、教育予算を削って子どもの未来を奪う。政治のプロは一体何をやっているのでしょうか。

裁判も政府追随が多い中で、今回のようなイラク派兵違憲判決が出されたことはまさに画期的でした。退官する裁判官だからできたのだという評価もあるようですが、そのような個人的事情で裁判長一人が違憲判決を出せるわけはありません。3人の裁判官は憲法の番人として真剣に事件に立ち向かい、プロとしてその職責を全うしただけです。

この判決に対して傍論にすぎないから従う必要がないと発言したピント外れの政治家が何人もいました。判決の拘束力の問題と権威性の問題を混同しているようです(マガジン9条参照)。

さて、5月からいよいよ様々な試験が始まります。憲法記念日を前にいろいろと考えさせる判例や事件がありましたが、皆さんはこうした事件に今後、直接かかわっていくことになります。自分の頭で考えて、自分の価値観で意思決定して、その結果に対して自分で責任をとれる法律家を目指してください。今勉強していることは将来必ず役に立ちます。毎日を大切に精一杯努力すること。その積み重ねで試験の日も必ず乗り越えることができます。毎日が真剣勝負です。