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2008年7月

2008年7月 2日 (水)

第155号 2つの主権

横浜弁護士会主催のシンポジウムにパネラーとして出席し、憲法と地方自治の観点から基地問題について発言してきました。基地周辺の爆音被害や米兵による犯罪被害、そして原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀母港化の危険性などについての報告もあり、沖縄の新垣勉弁護士からは地位協定という不平等条約に関しての講演、岩国の井原勝介前市長からは住民投票の意義や国の露骨な嫌がらせに関する話なども伺えてきわめて有意義でした。

先日の普天間基地爆音訴訟の判決では、深夜早朝の飛行訓練の差止は認められませんでした。日本政府は米軍をコントロールできる立場にないという理由です。米国を被告とした横田基地訴訟では民事裁判権が及ばないという理由で上告棄却されています。つまり、日本の空で米軍はやりたい放題というわけです。
ちなみに米軍機による爆音被害で住民に支払う損害賠償金も地位協定上は米国が支払うべきものですが、事実上支払いを拒否され、日本政府は私たちの税金で肩代わりしています。

このシンポジウムでよくわかったことは、繰り返される米兵による凶悪犯罪を自由に捜査することも許さない地位協定も、原子力空母の安全性についても、そして岩国への艦載機移転による騒音被害についても、日本政府は米国の言いなりで主権国家としての主体性がまったくないということです。

明治時代の日本政府は列強諸国から押し付けられた不平等条約を恥じました。
そして条約改正のために懸命に努力し、粘り強く交渉を続けました。屈辱的なほどの対米従属を続ける今の日本の姿は当時の政治家や外交官の目にどう映るのでしょうか。

米国の前では最高独立性としての主権はかすんでしまいます。ですが、それは私たち国民が国政の最高決定権としての主権を主体的に行使していないからに他なりません。米国に従属する政府、政府に従属する地方自治体、その地方自治体の議会や首長に従属する市民。結局は私たち自身の主体性の問題なのです。

再編交付金を自治体にちらつかせて米軍再編に従わせる政府は、明らかに地方自治の本旨である団体自治を侵害しています。住民自治の力ではね返さなければなりません。主権者にはそうした力があるはずです。

先月、恒例の韓国スタディツアーに行ってきました。日本の戦争責任や司法制度改革などを再考するよい機会となりましたが、私にとってもっとも衝撃的だったのは、偶然、参加できたキャンドルデモでした。当初はキャンドルを持った数人の高校生による米国牛輸入反対集会から始まったものが数万人規模に膨れ上がり、連日、市庁舎前の広場や大統領府へ続く道路を市民が埋め尽くしていました。

大韓民国憲法1条(「すべての国家権力は国民から生まれる」)の歌を歌い、自分たちの主張を堂々と表現する若者たちと、そうした表現活動を許す国が私たちのすぐ隣にあるのです。民族性の一言では片付けることのできない民主主義の成熟度の違いを見せつけられた思いでした。

今回、話を伺ったキム・ソンス弁護士は司法試験に1番で合格しながら、市民のために労働弁護士として活躍されてきた方でした。また、司法制度改革推進委員会委員長でもあったハン・スンホン弁護士は軍事政権下で民主化運動のために2度も投獄されています。74歳の大先輩に、信念のために闘う、そのしなやかな強さを見せつけられ、チェ・ゲバラと同じ誕生日に50歳を迎えた自分の未熟さを思い知りました。まだまだこれからです。