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2008年8月

2008年8月 3日 (日)

第156号 合格後を考える

4年に一度のオリンピックで、超一流の選手はしっかりと結果を出します。一瞬に焦点を合わせたこの集中力は驚異的です。一般的には、この日を目指して、この一瞬のために精一杯頑張ってきたと思われています。

確かにこのオリンピックで引退という選手はそれでいいのかもしれません。しかし、多くの選手は今回の結果にかかわらず、また次を目指します。つまり、ここがゴールではありません。選手として続けていくことにも大きな意味があると考えているのです。今回の結果を受けて反省し次に活かす。ここでの勝敗を次に活かすことができれば、それは自分にとって意味のある出来事であったと納得することができます。

一流かどうかは負けたときの対処の仕方を見るとわかると言われます。たとえ、その勝負で負けても、そのことへの向き合い方次第で、それは負けではなくなります。次につながるよい勝ち方、よい負け方があるということです。持続可能な勝敗と言ってもいいかもしれません。

自分の身に起こる一つひとつの勝敗をこうした連続の中で捉えていくためには、常にゴールの先を意識しておくことが必要です。一流選手はオリンピックの先の大きな大会を考えて調整していると聞きます。するとそこに至る通過点であるオリンピックで、力まずに最大の力が発揮できるというわけです。

ある陸上のコーチは選手にゴールを目指すな、ゴールの数メートル先を目指して走り抜け、とアドバイスするそうです。確かにゴールを目指してしまうと、無意識のうちにゴールで止まってしまうイメージに支配されてしまうのかもしれません。その先を目指して走り抜いた方が、勢いに乗ったままテープを切れそうです。

これは「合格後を考える」という伊藤塾の指導方針と一致します。合格したら成長が止まってしまうような勉強をするのではなく、将来にわたって限りなく成長し続けることができるような、まさに持続可能な勉強をしていくことが必要なのです。

特に法律家の仕事は一生勉強が続きます。毎年のように改正され、新しく生まれる法律を追いかけ、めまぐるしく変わる時代の変化に対応していかなければなりません。将来の変化に耐えられるような盤石な基礎を固め、未知の問題に対処できるような考える力を身につけて自分の頭を鍛えていけば、一生走り続けることができる、持続可能な法律家の基礎ができあがります。

目先の法科大学院入試、各種試験の合格を目指すのではなく、その先を常に意識していくのです。合格後を考えろ、一歩先を考えろ、ゴールの先を意識しろ、としつこく言われ続けることによって、大きな視点でものを見るクセがついてきます。自分を客観視する余裕が生まれてきます。試験当日に極度に緊張しないように自分をコントロールする術を身につけることができます。

しかし他方で、目の前の一つひとつの試験や問題に集中していかなければ力はつきません。目前の課題に真剣に取り組めない人が、その先を考えるなどということは、夢に逃げているだけで何の益もありません。合格後を考えることが、現実から逃避するための言い訳になってはならないのです。

一点に集中して力を発揮するためには、集中力の障害となるような情報を遮断して、集中力の阻害要因としての感情をコントロールしながら、必死に努力することが必要です。そうして自分を鍛え上げる毎日があってこそ、合格後を考えることが効果を発揮するという真理を忘れてはなりません。