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2008年9月

2008年9月 2日 (火)

第157号 オリンピックとアフガン

チベット問題、グルジア紛争など報道するべきことはたくさんあったはずですが、先月のマスコミはオリンピック一色でした。確かに4年に一度の「その瞬間」に向けて努力を重ねてきたアスリートたちの活躍は結果にかかわらず心を打ちます。

レスリングで銅メダルを取った浜口京子さんは本当にお父さんに愛されているんだなあと感じましたし、五輪連覇を果たしておやじの仕事を息子にしっかり見せた柔道の内柴正人さんの言動からは家族への思いが伝わりました。

この2人はともに今年30歳です。自分の夢に向かって30代になっても努力を続け、結果を出しました。見事です。本人たちは自分と家族のために闘っただけだと思っているかもしれませんが、その活躍は人々に多くのものをもたらしてくれました。経済効果のみならず、頑張る力、諦めない闘志など、多くの価値を私たちに伝えてくれました。

こうして私たちが日本代表の華々しい活躍に感動しているときに、その陰で日本の国民にほとんど知られず、ただ黙々と紛争地域の人々のために人道支援を続けてきた青年が先日、アフガニスタンで拉致され殺害されました。

農業を学び、「アフガンの子どもたちにパンを食べさせてあげたい」という夢を実現しようと5年間努力を続けてきた矢先の31歳でした。被害にあった伊藤和也さんが所属していたペシャワール会は、医師の中村哲代表の活躍で有名ですが、現地の人々にもっとも信頼されているNGOです。

日本政府が米軍を支援してインド洋で給油活動を始めたとき、アフガニスタンの人々の日本に対する信頼が失われ、NGO活動も危険が増大してやりにくくなるから、一刻も早く給油活動など止めてほしいと訴えていたのが中村代表でした。

その声を無視し、イラク、アフガニスタンで罪もない一般市民の殺戮を繰り返す米軍に人道支援の名目で加担し続けているのが日本です。イラク自衛隊派兵違憲判決が出ているにもかかわらず、撤退もさせず、アフガニスタン給油活動をさらに継続するつもりでいるようです。

アフガニスタンではここ数年、タリバンが勢力を回復し、米軍主導の多国籍軍や、NATOが指揮するISAFとの交戦が急増しています。外国軍の誤爆などで一般市民に多数の死者が出ており、地元住民の反発も強まっているようです。政府の言う人道復興支援という、実態のないデタラメと、米国追従の無思慮な外交政策のせいで、貴重な若い命が失われました。

イスラム世界での日本への信頼を高め、本当の意味で国益に適う活動をしていた若い青年による真の国際貢献は、こうした事件がなければ誰も振り向かなかったかもしれません。

30代になっても努力を重ね、オリンピックという檜舞台で華々しく活躍する青年と、誰からも注目されないアフガニスタンでの地道な活動をする31歳の青年と、その生き方はどちらも尊敬に値するもので等価値だと思っています。

心からの善意であっても通じることが困難な異文化社会で、強い信念と高い志を持った若者たちが文字通り命をかけて築いてきた日本への信頼を、安易な米軍追従で打ち壊してしまうのではなく、少しでもそれを前に進めることが日本国憲法の理念に合致するものと確信しています。

皆さんが法律家を目指して努力を続けたその先にあるものは、こうした憲法価値の実現であってほしいと願っています。