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2008年10月 2日 (木)

第158回 世襲

またしても、世襲議員が総理大臣になりました。小泉元首相も次男を4代目の政治家にしたいそうです。構造改革を叫んでいた人が結局はもっとも改革すべき部分に関して、旧弊を踏襲してしまうのですから、その改革がいかに口先だけのものであったかがよくわかります。

ケネディ家やブッシュ大統領の例をあげるまでもなく、世界にも世襲政治家はいます。しかし、それは例外です。イギリスの貴族院ですら、ブレア首相の下で世襲議員改革が行われました。日本の国会議員の1/3は世襲議員で、麻生内閣18人の閣僚のうち11人が世襲議員ですが、これはやはり異常です。

確かに、これらの議員も選挙で選ばれてきました。しかし、地盤(支持母体)と看板(知名度・人脈)があり、かつカバン(豊富な選挙資金)を労なくして得られる世襲議員ばかりが選出されてきたのでは、正当に国民を代表しているとはいえません。

形式的には、全国民の代表ですが、実質的には自分の育った環境の利益代表となってしまう恐れが多分にあります。世襲であるが故に落選することはほとんどない身分で議員活動をしていると、自分が国民から選ばれた公僕であるという立場を忘れ、あたかも国民の上に立って政治をしているかの錯覚に陥るようです。

いつ落選するかわからない緊張感が国民の声を素直に反映し、国民のための政治を行おうと必死になる動機付けとなるのですが、世襲で議員の椅子が保障され、あたかも特権階級にいるかのごとき勘違いをしている議員が多くいるようです。

昨今の政治は生活者の痛みがわからないことからくる無策が続いています。最低生活費にすら満たない収入しか得られていない貧困世帯は全世帯のうち2割強もあります。そして若者フリーターの貧困が取り上げられることが多いのですが、実は、貧困世帯の8割以上は母子世帯です。この子育て世代と高齢者がもっとも深刻な情況で、この異常なほどの高率はOECD加盟国の中でも突出しています。

かつては、長期雇用などの日本型雇用制度の下で企業が、最低限度の生活つまりセイフティーネットを保障してきました。これを構造改革という名の下に、小泉内閣(自公政権)が大企業の大規模なリストラを促進することによって崩壊させました。なんと1年間で125万人もの正規雇用が減少したのです。

小泉、安倍、福田と続いた世襲内閣は、こうして市民に痛みを強いる反面、他方で、税金をアフガニスタン戦争、イラク戦争、ミサイル防衛、米軍再編など軍事に浪費してきました。人の痛みを感じることが政治家の出発点でなければならないと思うのですが、世襲議員にはそれが不可能なようです。

法科大学院制度が始まって、法曹にも2世、3世が増えているといいます。依頼者の痛みをわかろうとしない法律家になってはなりません。たとえ自分が経験したことがなくとも、知性によって、想像力によって弱い立場の人々の痛みを理解しようと努力することはできるはずです。

司法試験であろうと司法書士試験であろうと、試験に合格し資格を得たということは、ひとつの力を得たことを意味します。力は、責任を伴います。能力ある者ほど、自らの責任を自覚して、与えられた使命を果たさなければなりません。合格するまでの勉強の苦しさや不安は、そうした自覚を得るための試練に他ならないのです。

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