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2009年5月 3日 (日)

第165回 裁判員制度

先月、裁判員制度に関するいくつかの催しに参加しました。13日には「裁判員制度を問い直す議員連盟」の勉強会で5月施行の前にできることはないかを国会議員に講義してきました。この議連は、裁判員制度の問題点を明らかにし、一時凍結などの政治的イニシアティブを取っていこうとするもので、国民新党から自民党までの超党派の国会議員が参加しています。問題点を知りながら何もしないのでは、不作為の政治責任が問われるという点から、少なくとも守秘義務の罰則を廃止する法案提出を強く訴えてきました。

26日にはNHKの朝9時からの「日曜討論」という番組に生出演しました。「迫る裁判員制度あなたはどう裁く?」というテーマです。通常は政治家が出ていますが、今回は、但木敬一前検事総長、川上拓一早稲田大学法科大学院教授(元東京高裁判事)、四宮啓國學院大學法科大学院教授(元日弁連司法改革調査室長、弁護士)、土本武司筑波大学名誉教授(元最高検検事)、そして私という法律家と、田中里沙さん(「宣伝会議」編集室長)が加わって6人での討論となりました。前に出演した「朝まで生テレビ」と違って、司会の島田敏男さんの采配で充実した討論をすることができました。ただ残念なのは、予定されていた凍結論まで話を進められなかったことです。

この双方で共通して主張してきたことがあります。それは刑事裁判の目的です。刑事裁判は、推理小説のように、真犯人を見つける場所ではない。検察の起訴事実に間違いがないかどうかをチェックするためにある。1人たりとも無実の者を処罰してはならない。そのためにこそ刑事裁判があるのであり、刑罰という国家による最大の人権侵害を防ぐのが裁判官の仕事なのだということです。

この刑事裁判が現在、十分機能していると肯定的に評価する裁判所・検察庁など官の側と、「日本の刑事裁判はかなり絶望的である」と故平野龍一博士(刑事法学者で元東大総長)が述べられたように否定的に評価する研究者・刑事弁護士などの民の側との大きな対立がありました。

裁判員制度の創設にあたってはこうした根本問題を棚上げして、司法の民主化という観点から推進することにしたようなのですが、その結果、何のための制度かが国民にわかりにくくなってしまいました。また、民主化の要請だけが一人歩きしてしまい、被告人の人権、裁判員の人権という視点が欠けてしまいました。その結果さまざまな問題を含んだままのスタートとなる危険があります。

特に裁判員に罰則つきで守秘義務を課す点は問題です。関係者のプライバシー以外の守秘義務は解除するべきだと考えています。それは一生黙っていなければならない裁判員の負担もさることながら、なによりもこの制度がうまく機能しているかの検証可能性を担保するためには絶対に必要なことだからです。開かれた司法をめざすのであれば、評議の場でどのような議論が行われたのか、裁判官に誘導されたのではないかなどを国民が知る必要があります。裁判員も司法権という権力行使に携わる以上、監視の対象でなければなりません。

憲法を知ってしまった者の責任として今後も国会議員への働きかけを続けていきます。こうして目の前の一つ一つの課題に真正面から向き合っていくことが大切だと思っています。試験直前は課題への対処力がもっとも鍛えられる試練のときです。逃げずに懸命に立ち向かうことで、それは合格後もっとも必要な力となるはずです。

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