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2010年8月

2010年8月 3日 (火)

第180回 弁護士の貧困

最近、弁護士にはなったけど仕事がないという報道をたびたび目にします。先月も新聞で「司法制度改革で弁護士が急増、新米弁護士に仕事がまわってこなかった」「先輩事務所の軒先を借りる軒弁・・日中、事務所でネットサーフィンをして過ごすことも多かった」という記事が全国紙の一面に掲載されました。

週刊誌なら、他人の不幸を喜ぶような読者を引きつけますから、まだ理解できます。ですが新聞でこれをやる理由がわかりません。「弁護士になったけど仕事がない」、当たり前です。弁護士になるだけで仕事がある、事務所でネットサーフィンをしていれば仕事がどこからか舞い込んでくるとでも思っているのでしょうか。
弁護士は貴族のような身分ではありません。単なる資格です。運転免許を持っているからそれだけで食べていけるという話は聞いたことがありません。

なぜ、弁護士というだけで仕事があると思い込んでいるのでしょうか。かつてそのような時代がありそれが今でも続いていると思いたいのでしょうか。時代が変わり、司法制度改革が必要とされ、ロースクールが生まれました。そもそもロースクール自体が時代の変化の中で生まれてきたものなのです。そこで学び卒業した人も考え方を変えなければなりません。

先日の「明日の法律家講座」で、教え子の戸田泉弁護士に「新しい弁護士の時代の夜明け」というテーマで話をしてもらいました。彼は30代で弁護士になります。彼のITJ法律事務所はTVコマーシャルもやっていますし、エンターテインメント関連の会社を中心に10社ほどの経営者でもあります。彼も弁護士の貧困という言葉が理解できないと言っていました。公務員であってもリストラされる時代です。競争に晒されることは不可避であり、悲観する理由はどこにもない。弁護士にとって日本経済のすべての活動はマーケットになり無限のチャンスがある、しかもライバルは弁護士だけ。他の業界から見るとあり得ないマーケットだというのです。これまでは競争できずキャリアで勝負するしかありませんでした。そんな時代に新人がベテランにかなうわけがありません。だから今、競争に晒されていることを喜ぶべきだと教えてくれました。

ロースクール卒業後どこにも就職せずに、地方で即、独立した40代の弁護士がいます。まわりの反対を押し切ってTVコマーシャルも打ちます。これまでは地元の中小企業の経営者が事件を依頼したいと思っても、県内の弁護士はたいがい県内大手企業の顧問だったりするので受けてくれず困っていた。新人であろうがかまわないから相談にのってほしいと依頼が殺到するそうです。そして英語ができる弁護士がいないので輸出入関連の英文契約書を見てあげると大変に感謝されるそうです。法律家の活躍の場はまだまだあります。

また、前述の記事には「社会人としてお金をためた。だが、入学すると、法学の基礎知識がない自分が合格できる気がしなくなってきた」という記述もありました。これまた当たり前です。この制度が始まる前から、私たちは入学前が勝負で、しっかりと基礎を身につけて入学しないと授業にはついていけないというメッセージを出し続けていました。しかし、そうしたアドバイスに見向きもせず、ロースクールの教授の言葉だけを信じてしまった者の自己責任です。適切な情報にアクセスする能力も法律家にとって重要な資質です。

結局、受験も仕事も自ら創意工夫をして主体的に努力する者が報われるという当たり前のことなのです。そしてこれはすべての試験種に当てはまることだといえます。