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2011年2月

2011年2月 3日 (木)

第186回 役割を果たす

サッカー日本代表がアジアの覇者となりました。多彩な人材がそれぞれの役割を果たした結果だと思います。世界を舞台に活躍する選手も増えました。有能な選手は自分の役割をよく知っていてそれをしっかり果たそうとします。

このチームを見ていて、日本という国家組織もそれぞれの機関が自分の役割を果たしたら国全体がもっと成長し、国民も幸せになれるポテンシャルを持っているのに残念だと感じました。
政治家は政治家の、官僚は官僚としての、法律家は法律家としての仕事をする。
そして国民は主権者としての責任をしっかりと果たす。
もちろん、マスコミもメディアとして伝えるべきことを正しく伝え、権力の監視機能を発揮することが必要です。

法律家の仕事は、憲法の理念を実現することです。それは、1人1人の個人を尊重すること、平和を実現すること、そして民主主義を機能させることに他なりません。そう考えて1人1票実現運動に取り組んでいます。

1月28日に福岡高裁で画期的な判決を得ました。
「投票価値の較差を生んだ公職選挙法の原因が、参議院の独自性を確保するための国会の合理的配慮によるものでないことは明らかであり」とその選挙区割りの合理性を否定しました。それはそうです。地方優遇のための措置というような理由があればまだしも、現在の選挙区割りはまったくのデタラメです。鳥取県選挙区を1票とすると、国道9号線のトンネルを東に抜けた兵庫県はいきなり0.21票になってしまいます。また東京の0.23票に対して、人口密度最低の北海道は0.21票にすぎません。

「都道府県単位の選挙区の設定及び定数偶数配分制は憲法上に根拠を有するものではない。」と参議院における都道府県単位選挙区が憲法上の要請ではないことを確認した上で、「憲法上の要請ではない都道府県単位の選挙区を維持するために、憲法上の要請である投票価値の可能な限りでの平等の実現を妨げることになっていて、許容しがたい現状にある」と断じました。しかも「可能な限りでの平等を実現」とは1人1票のことです。これはすごいことです。

一見当たり前のことを言っているようにみえますが、今の時代、答案と同じで、当たり前のことを当たり前に書くことは実はとても難しいのです。そんな中で憲法の視点から明確に投票価値の平等を位置づけ、憲法の擁護者としての職責をしっかりと果たしたこの判決は高く評価するべきだと思います。

国家組織においては、政治部門が積極的に政策を実現し、それを裁判所が憲法の観点から監視する。政治部門が憲法価値を実現するために適切な仕事をしないときには、その不作為を糾弾することも裁判所に期待された役割です。裁判所が政治部門に遠慮して合憲判決ばかり出していたのでは、本来、憲法が期待する国家組織の権力分立、ガバナンスは機能しません。裁判所はしっかりとその職責を果たすべきです。

それと同じように国民も主権者として自らの責任を果たさなければなりません。
持てる力を総動員して権力を監視し、憲法価値の実現のために努力をしなければなりません。
もちろん、法律家は法律を通じて社会を変えることができるのですから、あるべき理想の社会を目指して道が遠くとも努力を積み重ねることが必要です。

一国民としても一法律家としても個人の力は微力ではあっても無力ではない。やがて大きな変革の力となります。そのためにはそれぞれが勇気をもって自分の役割を果たすことが必要です。
皆さんの果たすべき役割はなんですか。今なすべきことをしっかりと成し遂げてください。