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2011年8月

2011年8月 3日 (水)

第192回 意志の力

東日本大震災の被災地に足を運ぶたびに思います。こうした被害で犠牲になるのは、いつも弱い立場の人たちであり、少数者なのだと。2万人の犠牲者も、10万人の避難者も全国民から見たら少数派です。多数派である大多数の人が何を思い行動するかが決定的に重要なことなのだと思います。

人間の生存を脅かすものは、災害であろうが、貧困であろうが、そして戦争であろうが、あってはならないものです。誰もが平和の中で生存する権利を持っています(憲法前文2項)。平和で安全な生活を破壊する災害、紛争、貧困、病気などの原因を人間が作り出しているのであれば、人間の力でそれをなくすことができるはずです。

伊藤塾東京校で実施された、イラク戦争の検証を求めるネットワーク主催のイラク人ジャーナリスト、ワリード・ホマディ氏証言会に参加しました。このネットワークには私も呼びかけ人として参加していますが、「イラク戦争を検証するための20の論点」(合同出版)というわかりやすいブックレットも塾で販売していますから、ぜひ読んでみてください。

今回伺った話は改めて衝撃的でした。日本の自衛隊がサマワでどのような評価を受けていたか。米軍兵士がイラク市民への捜索・押収と称してイラク紙幣を強奪し、基地内の売店で両替していた事実。何の理由もなく米軍に拘束され、拷問され、自白を強要されたあげく刑務所に何年も収容される実態。ジャーナリストが真っ先に米軍に標的にされる話。彼が自ら経験したイラク戦争の生々しい現状を聞き、この戦争を正義の戦争と肯定する人もいますが、戦争そのものが理不尽の元凶であることを再認識しました。

現在のイラクは、日陰でさえ50度から60度の暑さの中で、電気が通じるのは途切れながら1日たった1時間。日本の計画停電、節電どころの話ではありません。
そして学校には机もなく、子どもたちは床に座って授業を受ける状態。深刻な宗派対立、殺人や汚職、貧困など、生活するための基盤自体が破壊されてしまったのが現在のイラクです。大量破壊兵器があるというアメリカの虚偽の情報によって始まったイラク戦争、日本がいち早くこの武力行使を支持するとして加担したイラク戦争の結果です。

戦争も災害も常に理不尽に声を上げることすらできない弱い立場の人たちが犠牲になります。子ども、高齢者、障害者、女性、一般市民。不正義は人為的に作られますから、正義はただ黙っていたのでは実現しません。残念ながら人間は過ちを犯します。しかし幸いなことに人間は過ちに気づきそれを正すこともできます。
そのためにはまず事実を知ることが必要となります。謙虚に事実と向き合い、検証し、二度と同じ過ちを犯さないための対策を検討するのです。15年戦争の加害の歴史すらまともに検証されていませんが、イラク戦争における日本の対応をしっかり検証することなしには日本の未来はありません。原発事故をはじめとする様々な不祥事の原因究明と責任の所在をあいまいにしてきたツケは、必ず次の世代への負担と犠牲となって現れます。

権力者の驕りによって、理不尽な目にあうのは市民です。震災対応の遅れ、原発安全神話の推進、自衛隊派遣、どれもこれもデタラメです。1票の価値が0.2票分しかないのに、これを著しい不平等ではないと言い続けてきた最高裁判事のデタラメも我慢なりません。私たちが事実を知り、それに対して毅然とした態度を取り、是正するべきであるとの明確な意志を持つことによって、これを正していくことは可能なはずです。戦争であろうが、原発であろうが、1票の不平等であろうが、人間が作った不正義ですから人間の意志でこれを正すことはできるはずなのです。私たち一人ひとりが強い意志を持つことで正せると確信しています。