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2011年9月

2011年9月 3日 (土)

第193回 試験とビジネス

NHK「仕事学のすすめ」(NHKウェブサイト)に出演することになり、法律の勉強がいかにビジネスに役立つかを考える機会を得ました。憲法や法的思考そのものも、もちろん様々な仕事に役立つのですが、ここでは勉強方法などがいかに仕事に役立つかというテーマです。勉強の過程で法律の内容以外にどんなことを学び、トレーニングすることになるかを改めて挙げてみました。

理念を持って臨む、合格後を考える、ゴールからの発想、目標をできるだけ明確にする、何事も可視化する、自分を客観視する、決断する力、何が正しいかわからない問題を自分の頭で考える、事実と論理と言葉で説得できるように訓練する、時間の使い方、計画の立て方、本の読み方、わかりやすい説得的な文章の書き方、上手な面接の受け方、モチベーションの維持方法、スランプ克服法などなど。

確かにこうして見ると、ビジネスでも役立ちそうな項目が次々と浮かびます。考えてみれば、ひとつの目的に向けて自分の思いを形にしていく作業という点では、ビジネスも勉強も同じです。しかも結果がどうなるかわからない不安に打ち勝たなければなりません。ときには周りの反対を押し切ったり、説得したりしながら進めなければなりません。いつまでもぐずぐず考えているだけではだめで、決断し実行しなければなりません。評論家でなく実行できる人間にならなければ、仕事では使い物になりませんし、試験も受かりません。

ということは、この試験の勉強をバランスよく真剣にやってきた人は、試験の結果がどうであれ、社会に貢献できるだけの力をつけてきているということです。
よく世間では、受験勉強だけやってきた人間は使い物にならないと言われてしまうことがありますが、それは受験勉強をしてきたこと自体が問題なのではなく、その内容なのだとつくづく思います。ゴールを見据えてそれに向けて計画を立て、自己管理をしっかりした上で日々淡々と努力することを続けられる人は、どの世界でも通用するのです。

伊藤塾出身の先輩たちも法曹や行政官以外のさまざまな分野で活躍していますが、それは資格を取るための勉強を通じて多くのことを学び身につけてきたからに他なりません。民間への就職も厳しい昨今、いかに自分を鍛え上げ高めるかは、どの分野に進もうとしている学生にとっても重要なことです。とくに最後まで絶対に諦めない強い心を作ることは重要です。何事も一回でうまくいくことはほとんどありません。諦めずに何度も挑戦する粘り強さ、忍耐力はビジネスや実務の世界でとても大切です。不安は自分の頭の中で自分が作り上げた幻想にすぎないのですから、それをコントロールすることは可能です。そうした技術を身につけることが重要なのです。

今月は司法試験の発表です。司法試験には3回の回数制限があります。どれだけ大きな不安でしょう。まさに大きな試練です。さっさと1回で合格しないのは資質がないからだと切って捨てることは簡単です。ですが、私は司法試験に10回以上挑戦し、すばらしい法律家になっている方を何人も知っています。

人それぞれ必要なときに必要な試練がやってきます。絶体絶命のピンチに追い込まれ、大きな不安に押しつぶされそうになりながら、それを乗り越えることは至難です。ですがそこで大きく成長できます。試練は自分に必要だからこそ現れたのだと自分に言い聞かせてぜひ乗り越えてほしいと思います。試験勉強とビジネスでは似ている点が多々ありますが、ひとつ大きな違いがあります。ビジネスでの失敗は多くの人に影響を与えてしまいますが、試験での失敗は自分の新たな成長の糧になるだけだということです。皆さんの頑張りを期待しています。