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2012年5月 2日 (水)

第201回 憲法記念日

5月は憲法記念日があるので、毎年あちこちで講演をさせていただいています。
今年も全国を駆け回っていますが、東日本大震災と憲法という依頼を受けることが多くなりました。

震災から1年以上が経過したにも関わらず、復興への道のりは険しく、とりわけ東京電力福島第一原子力発電所事故による避難者は、自宅への帰還、そのための除染等、いまだ多くの問題を抱えています。
これまで何度もこの雑感で述べてきたように、このような危機のときこそ憲法が活かされるべきです。そして、被災者の支援及び被災地の復旧・復興にあたっては、個人が尊厳をもって主体的に生きることを保障する「人間の復興」こそが基本とされる必要があります。

ところが残念なことに、震災をきっかけとして、憲法を活かすこととは逆の動きが活発化しています。
改憲案も発表されていますが、憲法の理念と基本原理に照らして問題があるものばかりです。
自民党案では13条の「個人の尊重」を廃止して単なる「人の尊重」に変更してしまい、99条では天皇、摂政を憲法尊重義務の主体からはずし、なんと国民に憲法尊重を要請しています。
近代立憲主義の本質を根本から改変してしまう内容となっています。

また、国家緊急権規定を創設するべきだという主張が声高になりつつありますが、震災への適切な対応が遅れたのは、政権担当者による現行制度の運用がまずかっただけであり、それを憲法のせいにするのはまるで火事場泥棒のようです。
近代立憲主義は権力分立と人権保障をその本質とするものですが、緊急権条項は非常事態への対処を理由に権力を内閣総理大臣に集中し、国民の権利と自由を広範囲にわたり制限する仕組みです。
こうした緊急権条項はときの政権によって濫用され、人間の尊厳をないがしろにしてきた歴史を持ちます。だからこそ憲法はこの規定をあえて置いていないのです。

ほかにも、憲法改正要件を緩和したり、国旗国歌への尊重を国民に命じたり、無限定の自衛権行使や国防軍の保持を明示したりして、戦争ができる普通の国になろうとするものもあります。

国民の間で活発な憲法論議がなされることは大歓迎ですが、改悪を許すことはできません。憲法価値を実現する法律家がもっと国民の間に入っていって、憲法の価値をしっかりと伝えることがますます必要と感じます。

法律家には様々な役割が期待されていますが、憲法価値を実現すること、つまり、一人ひとりを大切にして、この国をより自由で、より豊かで、より平和な国にするべく努力をすることは間違いなく、法律家に期待されたことだと考えています。
弁護士などの法曹三者のみならず、司法書士も行政書士も同様です。

今月、本試験を受ける皆さんも多いと思います。
この試験で、もちろん皆さんの夢を実現してほしいのですが、皆さんが夢を実現することは、同時に多くの人々の希望につながり、ひいては日本の社会、そして世界をよりよくすることに貢献することを忘れないでください。

まだまだ真の法律家は求められています。手つかずの多くの分野の仕事がたくさん残されています。
予備試験であれ、司法試験であれ、最後の1分1秒まで頑張ってきてください。合否の結果を気にしても仕方がありません。
基本に立ち返って今やるべきことを淡々とこなすだけです。社会から求められている以上、結果は必ずついてきます。
安心して堂々と勝負してきてください。
期待しています。

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