真の法律家・行政官を育成する 「伊藤塾」 株式会社 法学館

2012年7月 2日 (月)

第203回 秘密保全法

受験生にとって試験種を問わず、情報は決定的に重要です。
正しい勉強方法は何か、どこが重要か、予備試験がどれほどチャンスか、すべて情報です。
正しい情報を得た者が試験を制するといっても過言ではありません。インサイダー取引制限も不動産や金融商品の説明義務もみな情報格差による不公正を是正するための制度です。
どんな場面であっても、情報を持つ者が持たない者を支配するのです。

国家と国民の関係においても、国民が情報を持った上での政治的意思決定ができなければ国民主権とはいえません。
原発再稼働の是非も原発の危険性に関する正しい情報がなければ判断しようがありません。
米国憲法起草者の一人であったマディソンが言うように「民衆が情報を持たず、またそれを獲得する手段のない民衆の政府は喜劇か悲劇の序章にすぎない」のです。

ところが現在、秘密保全法が検討されています。
2011年1月に学者による「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」(以下「有識者会議」)が設置され(事務局は防衛省、外務省、警察庁からの出向者)、8月に報告書が公表されました。その内容は以下のように多くの問題を含んでいて到底許されるようなものではありません。

単に「防衛秘密」を「漏らした」「公務員」に「罰則を科する」だけのものではなく、
(1) 秘密の範囲は、「防衛秘密」に限らず、「外交と公安秩序維持」に拡大し(あらゆる秘密)、
(2) 規制される行為は、情報の「漏えい」に限らず、「探知・収集」行為に及び(あらゆる行為)、
(3) 規制対象者は、「国家公務員」だけでなく、「関連する大学や民間企業職員」を含み(あらゆる人)、
(4) 秘密保全の手法は、「罰則を科する」だけでなく、不適切な人を排除し、調査をクリアした一部の人だけに秘密を取り扱わせる「適性評価制度」を導入しています。

国が国民に知らせたくないと考えた情報はどんな情報であれ、特別秘密と指定して、それを漏らすだけでなく知ろうとする行為自体も処罰しようとするのです。
これによって報道出版関係者や安全保障防衛問題の研究者・評論家だけでなく、平和運動やオンブズマン活動に関わる市民や学生も、インターネットなどで情報を入手しようとするだけで処罰の対象となります。
いつ処罰されるかわからないとなると、原発の安全性を確認したい、自衛隊の海外活動をしっかりと監視したいというように、主体的に行動しようとする市民を萎縮させ、環境保護運動、平和運動、オンブズマン活動などあらゆる市民運動を大きく制限することになります。
つまり物言わぬ従順な国民にさせられてしまうことになるのです。
秘密保全法は、国民の知る権利を侵害するのみならず、このように国民主権を没却する重大な結果を招くことになります。

こうした秘密保全法制の整備は、今回突然出てきたものではありません。2000年からアメリカが一貫して要求してきたものでした。日米軍事一体化のためには軍事情報の共有と秘密情報保護が不可欠だからです。自公政権、民主党政権を問わず官僚主導で一貫して進められてきたものなのです。
それに日本の警察が独自に「公共の安全及び秩序の維持」に関する情報も秘密にしたいと考えて追加してきたものです。まさに国家による情報統制の仕上げです。
法律家を目指す者としてこれを許さないという思いを共有してもらえるとうれしいです。
日弁連の以下のサイトを参考にしてください。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret.html

伊藤塾ホームページ
Copyright © 伊藤塾/(株)法学館 1996 All Rights Reserved.