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2012年10月

2012年10月 2日 (火)

第206回 事実と意見

日中国交回復40年はきわめて残念な形で迎えてしまいました。尖閣諸島問題が日中関係を悪化させてしまったようです。
先月、毎年恒例の中国スタディツアーで、南京、武漢、上海を訪問してきました。9月18日までの1週間です。1931年のこの日に満州事変の発端となった鉄道爆破事件(柳条湖事件)が関東軍の謀略によって引き起こされました。

中国各地で反日デモが繰り返されている時期でしたし、暴動の様子も日本では報道されていたので、なぜこんな時期に行くのかという声もあったようですが、このような時期だからこそ現地に行って自分たちの目で見て事実を確かめること、そしてこうした国家間の緊張が高まっている時期こそ民間の交流が大切だと考えているので予定どおり実施しました。憲法前文がいうところの「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の実践だと思うからです。

さて、行ってみると、私たちの訪問した都市はどこも例年どおりの穏やかな街のたたずまいでした。旅行行程中、危険な目に遭うどころか不愉快な思いをすることも一切ありませんでした。
南京大虐殺記念館は若者で一杯でしたが、日本人である私たちを見て何か言ってくる人もいませんでしたし、虐殺現場の近くの公園でも老人たちの長閑な余暇の時間が感じられただけでした。武漢の揚子江沿いのプロムナードは家族連れやカップルで穏やかに賑わっていました。
とても平和な洗練された雰囲気を感じることができて、NHKBSのニュースで報道される暴動はどこの国のことなのかと思わせるような1週間でした。

これまで何度も言ってきていますが、報道への接し方は本当に注意をしないといけません。
法的思考方法の1つに「事実と意見を区別する」ということがあります。
また、報道は主張だということも憲法で報道の自由の勉強する際に学びます。まさにそれを体感することができました。
日本のメディアは日本国内の原発反対のデモの様子はほとんど報道せず、中国の反日デモや暴動ばかりを取り上げます。
仮に日本の原発デモが起こった都市を日本地図上にマークしてニュース報道すれば、日本中で大変なことが起こっていると世界に発信することになるでしょう。

どんな問題を分析するときも同じですが、特に尖閣問題のような外交問題を見るときに重要な視点があります。
それは、生じた結果に着目すること、そして誰が利益を得たのかを考えることです。
石原都知事がわざわざアメリカの伝統的な保守的価値観を標榜し国防強化を掲げるシンクタンクで、尖閣諸島を都が買うことを発表したことが発端となって今回の問題が始まりました。
今や、多くの国民は領土保全、沿岸警備強化、自衛隊強化、日米同盟、そして憲法改正に抵抗感がなくなってきています。
オスプレイの沖縄配備も強行され、普天間問題などへの本土の国民の関心は完全に薄れてしまいました。
日米同盟という軍事同盟のより深化と発展が米国の思うように進んでいるだけです。

法律を学ぶ中で、私たちは事実に基づいて判断すること、両当事者の意見を聞いてから判断すること、物事を疑ってかかることなどの法的思考力も訓練します。
個人間の問題だけでなく、国家間の問題においても国民がこうした法的思考力を身につけていることは、両国の国民の幸せの総量を増やす上において,大切なことだと本当に思います。

10月17日には、参議院選挙に関する1人1票訴訟の最高裁判決が出ます。
先月、最高裁大法廷で弁論をしてきました。この問題に関してもそれぞれが与えられた自分の役割をしっかり果たすことが大切だと思っています。
国会議員は全国民の代表者としての役割を、裁判官は違憲審査権を持つ者としての役割を、国民は主権者としての役割を国民審査でしっかりと果たすことが重要なのです。
そして塾生には憲法を学んだ者としての役割をしっかり果たしてもらいたいと願っています。