真の法律家・行政官を育成する 「伊藤塾」 株式会社 法学館

2015年5月 3日 (日)

第237回 憲法記念日

68回目の憲法記念日を迎えます。
国民の力によってこれまで憲法価値を守り続けてきたのですが、その憲法が未だかつて無かったような危機的状況におかれています。自由が抑圧され、戦争する国へと着実に進んでいるようです。全国の弁護士及び弁護士会も会長声明、意見書、決議などで繰り返し、立憲主義と恒久平和主義に反する動きを批判してきました。

昨年7月1日の閣議決定をふまえて政府は国民不在のまま、米国と日米ガイドラインという戦争協力の約束をしてしまいました。主権者国民に説明する前に米国と約束してしまう、これで安倍総理が誰のために政治をしているかがよくわかります。そして、自民、公明の与党協議という密室の中で、この国が戦争する国に変わる法律案が用意されました。

私たちは、政府の言葉にだまされないようにしなければなりません。積極的平和主義、これは積極的軍事介入主義。国際平和支援法、これは戦争支援法に他なりません。武力攻撃事態、存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態など事態を連発します。事態とは戦争のことです。戦前も、満州“事変”と言い換えて国民の眼をごまかしました。今、同じことが起こっています。

グローバル、切れ目のない、という言葉もなんとなく耳当たりがいいので困ったものです。世界中で他国の戦争の片棒を担ぎ、切れ目なく戦争に突っ込んでいくということです。これまでは、自衛隊が武力行使できる範囲を日本周辺に限定し、平時と有事、個別的自衛権と集団的自衛権と切れ目をつけることでその活動範囲を限定してきました。それをこうした限定なしに、世界中どこでも、自衛の措置という名目で武力行使ができるようになり、戦闘地域でも弾薬補給もできるようにしてしまうのです。憲法9条の立憲的統制をまったく無にしようとしています。

これで一気に日本が戦争に巻き込まれる危険が高まります。これに対して安倍総理は、「戦争に巻き込まれる」というレッテル貼り的な議論だと批判します。ですが、レッテルは商品の中身どおり正しく貼らなければなりません。中身と違うレッテルを貼って消費者を欺くことは偽装であり許されません。「国民の安全を保障する」という偽装のレッテルにだまされることなく、「戦争関連法」という真相どおりの正しいレッテルをしっかりと貼って1人でも多くの国民に、真実を知ってもらわなければならないのです。誰も戦争などしたくありません。残念ながら人は自分の見たいものしか見えません。「戦争なんて大げさなことを言って」と、目をつぶることができればどんなに楽なことでしょう。

安倍総理は、一方で「抑止力を高めて国民の安全を保障します」といい、他方で「断じて戦争に巻き込まれることはありません。」といいます。ですが抑止力とは、いざとなれば戦争してたたきのめすぞと相手を脅すことです。もし断じて戦争しないと言ってしまったら、相手は怖くもなんともありませんから、抑止力は働きません。「軍事的抑止力を高めるので戦争に巻き込まれる危険は増えますが、日米同盟はそれほど重要なので覚悟してください」というか、または、「戦争に巻き込まれないようにするために、抑止力には頼らない安全保障政策を実現します」というか、どちらかでしょう。抑止力が崩れたときのリスクを国民に説明しないのは不誠実です。私たちはこうした言葉に惑わされないようにしっかりと憲法の力をつけなければなりません。

そもそも憲法を何のために作ったのでしょうか。前文に書いてあるとおり2つの目的のためです。第1に我が国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保するため。第2に政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする、つまり、政府に二度と戦争させないためです。この2つの目的を主権者たる国民一人ひとりが主体的に行動することで達成することにしました。私たち一人ひとりが政府を監視し、おかしいと気づいた者から声を上げることで、この2つの目的を達成しようと決意したのです。

これまで多くの市民が声を上げて闘うことで、人々の自由と平和そして暮らしが守られてきました。憲法9条はこの国の自由の下支えとして機能してきました。
自由と平和は一体なのです。過去の市民の努力で今があるのならば、今を生きる私たちには責任があります。過去の先輩達への責任と、これから生まれてくる新しい命に対する責任です。今を変えれば明日は変わります。今日私達が何をするのかで明日は変わるのです。私も身体を張って憲法の価値を守ります。それが憲法を知ってしまった者、そして法律家の使命だと信じているからです。

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