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2016年7月 1日 (金)

第251回 選択

試験では様々な選択を迫られます。試験の最中も発表後にも選択が必要になります。人生は選択の連続です。試験での選択は気合いでなんとかする人もいますが、人生の選択はそうはいきません。憲法は幸福追求権という人権を保障しますが、これは幸福の中身は各自がそれぞれ自分で決めること、その自分が決めた幸福を追求する過程を人権として最大限保障するという意味です。

このように、憲法は自分の幸せは自分で決めることを各個人に要求しています。憲法13条の個人の尊重、幸福追求権という価値は、各個人に選択、決断を迫る厳しいものだとわかります。一人ひとりを個人として尊重するということはそういうことです。そして自分が何に幸せを感じるか、自分の幸せを実現することができる社会や国とはどのようなものかをしっかりと考える機会が選挙です。選挙権とは自分が幸せを感じられる国はどのようなものかを考える機会であり、その自分の考えを示す意思表示の場なのです。

1925年までは高額納税者の男性にしか選挙権がありませんでした。その結果として、たった5%の裕福な人たちの幸せのために政治は行われていました。男子普通選挙が始まり、貧困にあえぐ人たちも自分の幸せを実現する政治を求められるようになりました。しかし、まだ男性の幸せを実現する政治にすぎません。70年前に女性選挙権が認められて初めて、女性も自分の幸せのために選挙という形で声を上げることができるようになりました。その結果、政治においてもやっと女性の幸せを実現するための政策が実施されるようになります。選挙権を行使しないということは自分の幸せは他人に任せるということを意味します。誰かに幸せの中身を決めてもらい、人に従っていれば、なんとか生きていけるからいいやという考えを私は昔から「奴隷の幸せ」と呼んでいます。映画「風と共に去りぬ」の時代の奴隷でも主人に保護され幸せだった人もいるはずです。ですが、そこに自由はありません。

自由という価値をどれほど重視するかは人によって違います。自由は自分で選択しなければなりませんから、鬱陶しいし面倒です。その結果について、自分で引き受けなければなりませんから責任も伴います。それでも自分は自分らしくいたい、自分の思いに素直に生きていきたいという欲求は大切にしたいと思います。

民主主義の本質は多数決です。審議討論の過程では少数意見を尊重しながら最後は多数決で決断し、それに反対の人もとりあえずその決定に従うというものです。たった1票の差でも少数派は従わざるを得ない冷徹なものです。ですが、その決断が間違っていたと気づいたときには、それを正すことができる点が独裁制と違って民主主義の優れた点です。このように判断を変えることができる政策などの選択には適した方法ですが、生き方や世界観、信仰心など、その人らしさという点から変えることができない人の心の中の問題まで、多数決で決めて他人に押しつけることはできません。EUから離脱することが損か得かに関して他人の判断が正しかったということはありますが、自分が何を幸せと考えるかについて、他人の判断の方が正しいということはあり得ないからです。

今回の選挙で自民党が憲法改正を表立って争点にしていないと批判する人がいます。ですが、それは違います。自民党は4年前に憲法改正草案を発表し、個人の尊重を否定して国防軍を創る、そうした国づくりを目指すとはっきり国民に示しています。これは今の憲法とはまったく逆の方向を目指すものです。自民党はこれまで選挙では争点にしていなかった秘密保護法や戦争法を強行に成立させました。しかしこれはともに自民党改憲草案の中にあることを実現しただけです。つまり着実にこのゴールに向かって政策を進めているのです。これは国民に対して誠実な態度です。こうした国づくりを目指すことに賛成なのか反対なのか、その選択がすべての選挙では求められているのだということをしっかりと自覚することが大切です。選挙は自分にとって何が幸せなのかを改めて考えるよい機会です。こうして考えて選択をする機会を増やすことが、自立した市民として生きることにつながると思っています。

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