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2016年11月 1日 (火)

第255回 おまえがガンバれよ

7月10日参議院選挙の無効を求める1人1票実現訴訟の高裁判決が全国で続いています。少なくとも最高裁大法廷判決の趣旨にそった判決が出ると思っていたものですから、東京高裁での合憲判決には驚きました。裁判所の判断のところで、憲法の条文が一切出てこないものでした。正確には、46条という参議院の任期に関する条文だけ引用されていましたが、私たちは任期など争っていませんからほとんど意味のない引用です。憲法の条文解釈は全くなされてない判決でした。国会の判断を追認するだけのものであり、塾生の皆さんに条文解釈が重要だと言っている立場からはとても評価できるような代物ではありませんでした。

7年間ほどこの訴訟を続けていますが、この間、最高裁判例で積み重ねられてきた2つの解釈規範が今回の裁判ではいくつかの高裁によって無視されました。それは、①参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだしがたい、②都道府県を参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はない、というもので、過去の議員定数不均衡判決の判断内容を大きく進めたものです。この訴訟の成果だと密かに自負しています。こうした議論の深化をも無視するような高裁判決が出てくるというのは、司法と政治の関係を考えるときに示唆的です。高裁判事の中には、現在の政治情勢の中で、最高裁もこうして打ち出した規範を維持できなくなっていると考える人もいるということなのかもしれません。

現実はこうして3歩進んで2歩下がるということを繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくのだと思います。そしてたとえ、2歩下がったように見えるときでも諦めてはいけないということです。次に3歩進むときが必ずあると信じて前を向いて続けられるかが重要なのだと思っています。

夏から秋にかけて様々な試験の合格発表がありました。試験ですから当然に合否の結果がでます。いつも言っていることですが、目の前の事実にどんな意味を与えるかは自分自身です。仮に不合格であっても、その事実から何を学び、次にどう活かすかを考えることができれば、それは次の挑戦への糧になります。目の前の試験の合否を越えた、その先にある自分のゴールをしっかりと見据えて進むことができれば、到達する過程でおこる出来事はすべて自分を鍛え上げるための試練として肯定的に捉えることができます。

そしてその合格後を考えたときのゴールは単に自分の幸せだけなく、多くの人の幸せとつながっていると認識できるとさらに力が出てきます。世界の幸せの総量を増やすことに向けての努力は、単に自分の個人的な利益のための努力に比べて数倍、いや数十倍、数百倍のエネルギーを生み出すと確信しています。自分の幸せの延長線上に社会の幸せ、そして世界の人々の幸せがあるような生き方ができるのが法律家や行政官です。どんな資格であろうが法律を使って仕事をするということは、社会の幸せの総量を増やすことにつながります。
合格後をしっかりと見据えて、自分のゴールを明確に意識して、目の前の課題を一つひとつ克服していく。その繰り返しが自分を鍛え上げ、結果として合格の日の自分を作り上げることになるのだと、再確認してください。「大きな目的」をもってやり抜く力が大切です。「やればできる、必ずできる」と信じて、「最後まで絶対に諦めない」ことが改めて重要です。これは私が40年間の様々な体験の中から確信していることですが、最近出版された『GRITやり抜く力』(ダイヤモンド社)でも同趣旨のことが心理学の成果として記述されていました。ゴールが本当に自分のものになっているときには、その過程をも楽しむことができます。

楽しみながら自分の幸せと社会の幸せがつながっている生き方は一つの理想です。モンゴルで調停制度を立ち上げるJICAの法整備支援プロジェクトで活躍した岡英男弁護士の自分らしい生き方が『おまえがガンバれよ』(司法協会)という著作に紹介されています。力んで頑張ろうするのとはまた違う生き方と弁護士の仕事の多様性の見本としてとても参考になります。是非読んでみてください。合格後の姿はいろいろでいいのです。

1人1票訴訟も安保法制違憲訴訟も、制定から70年たったこの国の憲法の行方も、今、重要な岐路に立たされています。困難に立ち向かうときほど、自分がより成長できると確信して私も頑張ります。

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