真の法律家・行政官を育成する 「伊藤塾」 株式会社 法学館

2018年4月 2日 (月)

第272回 散る桜

渋谷の伊藤塾の前の桜も華やかに咲きほこり見事に散っていきました。 「散る桜、残る桜も散る桜」これは良寛和尚によるものとされていますが、受け止め方は様々のようです。特攻隊員の遺書をイメージする人もいますし、命のはかなさを感じる人もいます。どうせ散ってしまうのだから頑張って咲き続けていても無駄だと考えるのか、同じように散るのであれば、美しく咲いていたいと考えるのか、とらえ方は人それぞれです。

誰もが生まれた瞬間から死に向かって歩み続けているのですから、命の意味や長さを問うことはむなしいようにも思えます。ですが逆に、だからこそ命の質を高めるという選択も可能です。今を大切にする、一瞬一瞬を懸命に生き抜くという選択は、あえて苦難の道を選んでいるようで、最近はあまり人気がないのかもしれません。ですが私はあえてそうした生き方を選択した人を尊敬しますし、そういう生き方をする人たちから学びたいと思っています。

最近、司法試験のガイダンスで言っていることがあります。予備試験合格者がなぜ就職において圧倒的に有利で、かつ実務における評価が極めて高いかについてです。合格率4%の試験に合格しているのだから当然でしょうという人がいますが、単に勉強ができるからという理由ではないと思っています。

昔の司法試験は合格率数パーセントでした。その時代に合格した先輩たちが自分と同じように難しい試験を突破してきた予備試験合格者に親近感を抱くからだという人もいます。自分と同類と感じるということのようですが、それは難関を突破してきたというプライドを共有できるという偏狭なことではなく、賢明な常人なら避けるであろうリスクをあえて選択し、これに挑戦するある種の「変わり者」という評価を共有できることが理由だと思っています。

もっと楽な道があるのに、あえて困難な試験に挑戦し苦難の道を選択した。そのこと自体に価値があると考えているからなのです。大学の授業をしっかり聞いていればロースクールには入学できる、そして司法試験は25%ほどの合格率で合格できると言われれば、普通はあえて困難な予備試験に挑戦しようなどとは思わないでしょう。フルタイムで仕事をしていて、同僚は飲み会やゴルフで余暇を過ごしているのに、仕事が終わった後にあえて予備試験に向けての講義を聴こうなどとは普通のビジネスパーソンは考えないでしょう。

ですが、あえて、その困難な選択をしたのです。しかも、勉強を開始したからといって、100%確実に合格できる保証などありません。結果が保証されていないのに挑戦し、不安と向き合いながら勉強を続けてきたのです。これは相当な「変わり者」です。困難な試験に合格したということは、このような困難に挑戦する気概があり、不安を克服し、結果が保証されない目標に向かって最大限の努力をすることができるということの公的な証明なのです。

こうした「困難に挑戦し努力を続ける能力」は、実務家にとって決定的に重要なものです。だから予備試験合格者は高く評価されるのです。仮にロースクールに進学したとしても、あえて困難な予備試験に挑戦して勉強してきたことで精神的にも成長し評価されます。これが伊藤塾で予備試験をめざして勉強することをすすめる理由なのです。

予備試験を例にしてきましたが、このことは公務員試験でも、司法書士試験でも行政書士試験でも同じです。困難な試験にあえて挑戦する中で鍛えられ、実務の世界で活躍するために必要な強靭な心と頭を作り上げていくことができます。伊藤塾出身者が実務の現場で高く評価されている理由の1つです。

オリンピックなどのスポーツの世界では、不利な状況から逆転して勝つ人がいます。その力の源はどこにあるのでしょうか。私は圧倒的な練習にあると思っています。誰よりも練習した、だから負けるはずがないという自信です。世界の誰よりも練習してきたという事実から、自分を信じる力が生まれてくるのです。勝ちたいなら誰よりも努力すること。それだけのことです。

圧倒的な強さは圧倒的な練習からしか生まれない。皆さんは圧倒的な勉強をしていますか。時間の問題ではありません。勉強の質であり、思いの問題です。合格したい、合格して実務で活躍したいという圧倒的に強い思いとそれを実践する覚悟です。どんな試験でも最後まで諦めなかった人が合格していきます。そして、もうひとつ大切なことがあります。ワクワクする気持ちです。試練の厳しさを楽しむくらいの気持ちがある方がうまくいきます。

散る桜を見て何を思うかは人それぞれです。ですが、舞散る花びらという派手な見かけの裏ではちゃんと力強い命は続いているのです。散る桜に惑わされず、堂々とした佇まいや新緑から、明るい初夏への希望を感じとることもできます。これから試験の本番を迎える人も、新しく勉強を始める人も、皆さんには楽しみながら圧倒的な勉強をしてほしいと願っています。

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