2019年12月 3日 (火)

<学習コラム9>法人税は誰が負担するのか

<学習コラム>法人税は誰が負担するのか① 19/11/27メルマガ「公務員の道標」より

日本では、選挙の際に庶民のための政策として法人税増税を掲げる候補者がいます。

特に大企業はかなり儲けているため、お金がある(儲けている)ところから税金を徴収しようというのです。

これは正しいでしょうか、検討したいと思います。

まずそもそも税金は、誰が負担できるのでしょうか。

理論的には、税金を負担できるのは自然人(ヒト)のみであり、企業の様な組織(単なるモノ)は税金を負担できないと考えます。

企業(組織)は単なる人々の集まりに過ぎないため、企業に税金を課すと、最終的にはその企業(組織)に関わる人々が税金を負担することになります。

そして結論から述べると、法人税を課しても、必ずしも金持ち(経営者や株主)が負担するとは限らず、場合によっては庶民(労働者や消費者)が負担する可能性があるということです。よってこの観点から法人税の増税は、庶民のための政策ではないことが分かります。

むしろ法人税の増税は、庶民(労働者や消費者等の経済的弱者)の負担を重くする場合もあるのです。

多くの政治家(候補者)は経済の専門知識がなく、誤った政策を掲げる場合が多いため、選挙の際に騙されないように専門知識を身につけた方がよいでしょう。


<学習コラム>法人税は誰が負担するのか② 19/12/4メルマガ「公務員の道標」より

企業(組織)は単なる人々の集まりに過ぎないため、企業に税金を課すと、最終的にはその企業(組織)に関わる人々が税金を負担することになります。

ここで企業に関わる人々には、会社の経営者や所有者(いわゆる金持ち)の他、労働者や消費者(いわゆる庶民)等がいます。

会社の経営者や所有者が負担する場合は、金持ちが負担することになるでしょう。しかし世の中はそう甘くなく、負担は大抵の場合弱者に押しつけられます。

すなわち法人税が課せられると、企業の経営者や所有者は負担(企業利益の減少)を避けるため、コスト削減として労働者(特に立場の弱い非正規雇用者)の賃金を引下げて(あるいはリストラして)負担させたり、その企業の商品の値段を引き上げて消費者に負担させようとします。

このように法人税の多くは、その企業に関係する立場の弱い労働者や消費者(いわゆる庶民)が負担することが多いのです。

庶民の負担を軽減し金持ち(儲けている人々)に税負担を課したいならば、法人税を増税するのではなく、高額所得者の所得に直接課税する所得税を増税(=最高税率の引上げを)すべきです。

次回は、なぜ法人税は減税するのかについて説明します。

2019年11月27日 (水)

条文の読み方について

法律の勉強をする際になにげなく読む条文、実は読み方に特有のルールがあります。 例えば、条文において「遅滞なく」「直ちに」「速やかに」の3つは、使い分けがなされています。

即応性が求められる順番に並べると、「直ちに」>「速やかに」>「遅滞なく」となります。 そして、「又は」と「若しくは」も使い分けがなされています。「又は」は大きな区分を表わし、「若しくは」はそれよりも小さな区分を表わします。具体的には、「A若しくはB、又はC」と表わされていた場合、AとBが一つの区分となり、Cと対になります。 括弧を付けて表すと、(A若しくはB)又はCとなります。

さらに、「推定する」と「みなす」も使い分けがなされています。

「推定する」は、当事者間に取決めがない場合や反証が無い場合に一応の法的効果を生じさせます。当事者の取決めや反証がある場合には、推定は覆されます。

「みなす」は、取決めや反証があったとしても、法律上の認定と異なる判断はできません。 このように、法令においては、同じようなニュアンスを持つ言葉であっても単語によって使い分けられているのです。

条文を読む際にこのような単語の違いにも注意して読むと、読み方もずいぶんと変わってくるでしょう。

勉強が進み知識が蓄積されていくにつれ、条文の雰囲気も変わってきますので、何度も繰り返し読むとよいでしょう。

参考文献 法制執務用語研究会 「条文の読み方」 有斐閣

2019年11月19日 (火)

何事も勉強

最近、スタッフとして学生の方々とともに様々な行政機関の業務説明会に参加させていただいておりますが、公務の裾野の広さに驚かされる毎日です。

これらの業務説明会は、各機関の具体的な業務内容や求められる人物像を把握するためのものであり、将来のキャリア選択においてそれらを自身の目で確かめることは非常に重要だと思います。自身の関心のある所管業務を担っているのか、自身の性格に合った組織なのか。自分自身と向き合いながら、それらを見極め、皆様は納得のいく進路を歩まれることでしょう。

また、公務員にあまり関心がない方にとっては、自身の進路の選択肢を広げるきっかけにもなると思います。最近は、民間企業でも社会貢献的な要素を有する業務に着手したりする例が見受けられるようになってきました。もはや公務員と民間の境界線は曖昧になってきているのかもしれません。

これらの説明会で学んだ事柄をご自身の糧として、少しでも今後の自己研鑽に役立てていただければ幸いです。

2019年11月18日 S.T.

2019年11月14日 (木)

少子化ショック

ご存知のとおり、我が国では少子高齢化が急速に進んでいます。そして、そのペースが予想以上のものとなりそうです。2019年10月時点での報道によれば、予測よりも2年も早く、2019年に出生数が90万人を割るだろうとのことです。2016年に初めて出生数が100万人を割り、3年連続で90万人台であったところ、2019年にはいよいよ80万人台へ突入するだろうということです。

これは、本当に大変な事態です。このままであれば、今後は高齢者がますます増え、若者がますます減っていきます。そうすると、本格的な移民受け入れを展開しない限り、労働力の減少や現役世代の過重な負担など、様々な問題が起きてきます。したがって、これらの問題を解決するには、移民受け入れをしないのであれば、今すぐにでも出生率を上げ、出生数を増やすことが絶対的に必要になります。

ひるがえって、政府の少子化対策は万全でしょうか。もちろん、否です。その証拠が、出生数80万人台へというニュースです。私は第2次ベビーブーマーの世代で、同級生は200万人を超えています。しかし、今の赤ちゃんは、同級生がわずか90万人なのです。

移民受け入れをしないのであれば、本当に、早急に、少子化対策をガンガン進めるべきです。より多く子どもを持つ家庭への減税や、子どもを育てる家庭への様々なケアなど、取りうる手段はすべて取るべきです。もはや、手をこまねいている暇はありません。今後の日本社会を論じる政治家や行政官は、この点にこそ責任を取るべきだと、私は強く思っています。

2019年11月14日 松田圭介講師(行政系担当)

2019年11月12日 (火)

2019年度・国家一般職試験における人文科学の分野の出題分析

人文科学担当の坂本です。今回は、ことし実施された「国家一般職」における人文科学の分野の出題分析を行います。

ことしも、例年どおり、日本史、世界史、地理、思想の分野から1問ずつ出題されました。来年以降も、この形で出題されると考えられます。 以下で、それぞれの分野の出題の分析を行いますので、今後の学習の参考にしてください。

-日本史 -第一次大戦~第二次大戦間の経済等に関する記述として最も妥当なのはどれか。 経済史に特化しているために、かなり難しい出題である。金本位制、通貨管理制度、農業恐慌、新中間層、満蒙開発青少年義勇軍、新興財閥など、テキストでゴッシク表示されてなかったり、テキストに載っていない細かいところまでの知識が問われた。一般職としては、ここ数年で最難関といってよい。おそらくこの傾向は続かないので、ここまで細かいレベルで経済史を押さえる必要はないと考えられる。

  • 世界史

    • 19 世紀から20 世紀にかけてのインドに関する記述として最も妥当なのはどれか。 インド史について、フランスが行ったことをオランダとしている点に気がつければ簡単に解ける選択肢とイギリスのインド支配の方法についてかなり細かいところまで尋ねる選択肢があった。大学入試の際、世界史を選ばなかった者にとってはかなりの難問であった。
  • 地理

    • 世界の農工業に関する記述として最も妥当なのはどれか。 各選択肢に大きな間違いが含まれている常識的な問題だった。テキストのゴシック字の箇所を押さえておけば、楽に得点できた。
  • 思想

    • 中国の思想家に関する記述として最も妥当なのはどれか。

諸子百家と朱子に対する常識的な問題だった。テキストのゴシック字の箇所を押さえておけば、楽に得点できた。

2019年11月12日 坂本正彦講師 (人文科学担当)

2019年11月 5日 (火)

グループディスカッション・討議・討論の流儀(内定者より)

★19/10/23メルマガ「公務員の道標」より

先日、東京校にて合格・内定ゼミにおいて、政策課題討議の練習会が開催されました。 テーマとしては、①「消費税をさらに上げるべきか」と、②「日本の通商政策を起案してみてください」の二つでしたが、参加してくださった方は練習してみていかがだったでしょうか。参加していない方は、自分だったらどう討議するかを想像しながらお読みください。

意外にうまくできたという人もいれば、しゃべれず落ち込んだ人もいるかと思います。端から見ていた私も、テーマについての知識がなくて発言に苦しんだ人や、テーマからずれたいわば「寄り道話」が長い人などがいた一方で、議論をまとめ引っ張っていった人がいるなど、現時点での各人の練習量の差が如実に出てしまったかなと思います。これからでも十分ブラッシュアップして合格点に到達することは可能ですから、あせらず頑張っていきましょう。

一回目の今回は、簡単にではありますが、練習会の内容面での講評・気になった点について、二回目では練習会の形式面での講評を、三回目では政策課題討議で発言数を増やすための方法について、書いてみたいと思います。

まず、①では「さらに」というフレーズがありますから、今回の増税の是非について答える必要はありませんので、注意してください。 ただ、今回の増税の背景知識をうまく使い自分の意見を主張することは、主張の説得力が増すよい手だったと感じます。個人的には、論じるかは別として、前提として増税か緊縮財政かといったことも検討してみるとより議論に厚みが増したかなと思います。

②では日本の通商政策を語るはずなのに、個別政策、特に情報通信政策に偏りすぎてしまったことが一番の失敗点でしたね。そして「日本の」通商政策を起案するのですから、いかに日本独自の方策を取れるのか、そこに注意を払って議論を進める必要があったので。「寄り道話」が多かったのは時間を割くべき議論に時間を割けなかった点で、大変にもったいなかったなと感じます。今回の失敗を次に活かしていきましょう。

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★19/10/30メルマガ「公務員の道標」より

政策課題討議の練習会の形式面での講評について、書いてみたいと思います。 練習会の講評でも指摘しましたが、議論中、机でメモばかり取って書記に徹しているというのは、自分の発言回数を減らし、相手の話をどこまで理解しているか採点官に示すことができなくなりますから、避けましょう。 もちろん全くメモを取らないとなると、最後の発表で少し困ると思います。この兼ね合いは難しいですよね。

自分にとってどの程度メモにとるかがよいのかを知るためにも、今後政策課題討議の練習会には積極的に参加してみてください。

また、話している人のほうに顔を向け、姿勢を良くしておくことも、意外と重要に感じます。横から見ていると、その差は歴然ですから、採点官に少しでも心象を良くするためにも顔を上げて人の話は聞きましょう。 その際、うなずくしぐさや相手の発言への共感・賛否を告げる発言をすることも、有効な手法だと思います。いずれにしても議論の流れに沿って自分の意見が言えるようになることをまずは目指してみましょう。

政策課題討議は練習すればするほど上達するものですし、その練習はどうしても一人だけではできません。多少面倒でも、塾に来てこの時間だけは練習するぞという気持ちが、合格への道を最短のものにしてくれるのではないかなと感じます。今後も練習会の開催はあると思いますので、皆様の参加をお持ちしております。 次回は、政策課題討議で発言数を増やすための方法についてです。ご一読ありがとうございました。

担当:総合職 内定者 Kさん

2019年10月31日 (木)

<学習コラム⑧>行動経済学

<学習コラム>「行動経済学」とはなにか① 19/10/30メルマガ「公務員の道標」より

2019年5月に経済産業省が「行動経済学」に基づく「ナッジユニット(部署)」を設置すると発表しました。同様な部署は、英国では2010年、アメリカでは2015年に設置され、さまざまな経済政策において成果を上げていることが報告されています。

これを受けて日本でもようやく設置が決まり、経済政策に生かされることになります。まず「行動経済学」とは、心理学を応用した人々の経済行動を分析する経済学の1分野です。

この行動経済学は、その研究者のセイラ-教授が2017年のノーベル経済学賞を受賞して注目を集めました。

また「ナッジ(nudge)」とは、英語で「肘で軽くつつく」という意味ですが、ここでは「ちょっとしたことで人々の経済行動を望ましい方向へ促すこと」を意味しています。


<学習コラム>「行動経済学」とはなにか② 19/11/6メルマガ「公務員の道標」より

従来の経済学は、人々が合理的に(正しく)行動することを前提に分析してきたため、それに基づく経済政策も人々の合理的行動を前提に企画立案されてきました。

例えば日本でも年金だけでは老後2000万円不足するという報告がニュースになりましたが、いかに老後の資金を国民に確保させるかが重要な経済政策の課題になっています。

これに対して従来の政策は、特別に税金を安くする等の政策(例えば日本では積立NISA等)で対応していました。

人々が合理的に行動するならば、税金が安くなる資金の積み立てを増やすはずですが、実際には大した成果がありませんでした。

そこで行動経済学は、なぜ人々は合理的な行動を採らないのか、それを妨げている原因は何かを心理学の手法で分析するものです。

そして政策を「ナッジ(軽く促すもの)」として企画立案することで、政策により人々の合理的行動を促そうとするものです。


<学習コラム>「行動経済学」とはなにか③ 19/11/13メルマガ「公務員の道標」より

行動経済学は、政策を「ナッジ(軽く促すもの)」として企画立案することで、人々の合理的行動を促すべきであると考えます。

例えば従業員に就職後の1か月以内に退職金の積立率を選んでもらうという政策(ナッジであり、強制ではない)を実施した結果、従来の税金の控除よりも遥かに大きな成果が得られたことが報告されています。

若者にとって退職金や老後のことは遥か先のことであり、心理的に軽視しがちです(=合理的に行動しない)。

これは将来より今を重視しがちな心理的傾向があるからです(関心はあるけど将来のことはつい後回しにしてしまう)。

そこで政策により早期に意思決定を促す(行動を後回しにさせない)と、人々は合理的な選択をする(今と同じぐらい将来を重視する)ということがわかったのです。


<学習コラム>「行動経済学」とはなにか④ 19/11/20メルマガ「公務員の道標」より

従来の経済学は、人々が合理的に(正しく)行動することを前提に分析してきました。 しかし現実には人々は合理的な行動を取らない場合があり、それを妨げている原因は何かを行動経済学は分析し、その原因を除くような「ナッジ」を政策として企画立案すべきであるとします。従来の経済学が人々の合理的行動とは何かを分析し、行動経済学がその合理的行動を人々に取らせるにはどのようなナッジ(政策)が必要なのかを分析します。 なおノーベル経済学賞受賞者のセイラー教授は、行動経済学の知識は、人々に正しい行動を促すことにのみ利用すべきであると警告しています。行動経済学の知識は、人々を正しくない方向へ促すことも可能であるからです。すなわち騙しの手法にも利用できるのです(極端にいえば政府が国民を騙す手法にも利用できるということです)。そこで行動経済学だけではなく、何が正しい行動かを分析する従来の経済学の知識も不可欠となるのです。

次回は法人税はだれが負担するのかについて説明します。

★過去の学習コラム

2019年10月11日 (金)

一生懸命やれば、知恵が出る

先日、おぉ、なるほど!と思った言葉です。

「一生懸命やれば、知恵が出る
中途半端にやれば、愚痴が出る
いい加減にやれば、言い訳ばかり」

これは、日本プロ野球界で、現役時代には「打撃の神様」と呼ばれ大活躍し、引退後には監督に就任して、1965年から1973年まで巨人の9年連続日本一(いわゆるV9)を成し遂げた、川上哲治氏の言葉だそうです(2013年に、享年93歳で死去)。

塾生の皆さん、受験勉強をやっていると、辛いことやしんどいことにたくさんぶち当たりますよね。 しかし、実は苦しいときは、成長したり実力をつけたりするチャンスです。辛いことやしんどいことから逃げずに、一生懸命対処すれば、成長できます。仮にそのときに、いい「結果」とならなかったとしても、手を抜かずに取り組んだという「過程」が人を成長させるのです。

また、めげずに一生懸命やっていると、あなたを助けてくれる人・言葉・本・音楽・映画などなどに出会います(本当です!すごいタイミングで出会います!)。もうこれ以上はムリ~~~ってなった後に、誰かの助けがあったり、思いもよらない方法・知恵が見つかったりして、乗り越えられたりするのです。

逆に言うと、辛い経験や苦しい思いをしないと(そんなに苦しまなくてもよいかとも思いますが、少なくとも試行錯誤をしたという実体験がないと)、人は成長しないし、実力もつきません。

もし、今、辛いことに押しつぶされそうになっている塾生さんがいたら、川上哲治氏の言葉を思い出してがんばってください。ピンチをチャンスに変えることができる場合があるし、少なくとも昨日の自分より成長できます。

(P・S ほんとうにほんとうに辛い状況だったら、がんばりすぎない・でも、あきらめない!の心意気で、行きましょう)。

2019年10月11日 内田太講師(法律科目担当)

2019年10月 3日 (木)

<学習コラム⑦>景気対策と「乗数効果」 

<学習コラム>景気対策と「乗数効果」① 19/10/2メルマガ「公務員の道標」より

消費税増税後の景気対策として政府が何兆円もの支出を行うとしています。なぜ景気対策として政府は支出を増やすのでしょう。

ケインズという経済学者は、不況は需要(支出)不足が原因であると主張します。消費税の増税は国民の需要(消費支出)を減少させる可能性が高く、景気を悪化させる可能性があります。よって景気を悪化させないためには、政府が需要(支出)を増加させればよいと考えます。

これを「有効需要原理」と呼びます。

また経済学には、「乗数効果」という理論があります。 「乗数効果」とは、政府が景気対策として支出を増加させると、国民の所得が乗数(何)倍にも増加するというものです。 すなわち政府が支出を増やせば、その何倍も国民の所得が増加するため、景気対策として効果があるということです。


<学習コラム>景気対策と「乗数効果」② 19/10/9メルマガ「公務員の道標」より

なぜ政府が支出すると、国民の所得が何倍も増加するのでしょうか。

まず政府が景気対策として10兆円の支出(ΔG=10)を行ったとします。 するとこの支出された10兆円は、政府に財を販売した国民の所得になります。 すなわちこのとき国民の所得は、まず10兆円増加します。次に国民が所得の50%を消費支出に使う(限界消費

性向c=0.5)と仮定します。 すると所得が10兆円増えた国民は、その50%の5兆円(0.5×10)を財の消費に支出します。するとこの支出され

た5兆円は、財を販売した別の国民の所得になります。 すなわちこのとき国民の所得は、さらに5兆円増加します。さらに所得が5兆円増えた国民は、その50%の2.5

兆円(0.5×0.5×10)を財の消費に支出します。するとこの支出された2.5兆円は、財を販売した別の国民の所

得になります。

すなわちこのとき国民の所得は、さらに2.5兆円増加します。このように同じことが無限に繰り返されます。


<学習コラム>景気対策と「乗数効果」③ 19/10/16メルマガ「公務員の道標」より

政府が一度支出すると、国民の所得が増加し、その国民も支出を増加させるため、次々に国民の所得が増加していきます。 以上のような繰り返しで、国民の所得は結局いくら増えるでしょう。これは数学で学ぶ無限数列の和の計算で求められます。 国民の所得がどのように増えるかを式で表すと、政府支出ΔG=10兆円、限界消費性向c=0.5(所得の50%が支出される)として、

 国民所得の増加(ΔY)の合計  ΔY=10兆円+5兆円+2.5兆円+~     =10兆円+0.5×10兆円+0.5×0.5×10兆円+~     =ΔG+c×ΔG+c×c×ΔG+~ と表せます。次にこの式の両辺にcを掛けると、

  c×ΔY=c×ΔG+c×c×ΔG+c×c×c×ΔG+~

となります。最後に最初の式から2番目の式を引くと、最初の式の右辺の2項目以降と2番目の式の右辺のすべてが消去されて、

  ΔY-c×ΔY=ΔG   (1-c)×ΔY=ΔG   ΔY=(1/(1-c))×ΔG     =(1/(1-0.5))×10兆円=2×10兆円=20兆円

となります。以上より政府が10兆円支出すると、国民の所得が合計で2倍の20兆円増加することが分かります。このとき乗数(=1/(1-c))は2倍となります。


<学習コラム>景気対策と「乗数効果」④ 19/10/23メルマガ「公務員の道標」より

最後に重要な点として、乗数(=1/(1-c))は、限界消費性向cが大きいほど大きくなるということです。

例えばc=0.5の時の乗数(=1/(1-c))は2ですが、c=0.9の時の乗数は10となるのです。すなわち国民が所得の多くを消費すればするほど、景気対策として政府が支出を増やしたときの国民の所得の増加効果(乗数効果)が大きいということです。

日本は倹約志向が強く、消費にあまり支出しない(限界消費性向cが小さい)ため、乗数が小さく、政府の景気対策の効果が小さいという問題点があります。すなわち個々人の倹約行動が、政府の景気対策効果を弱めてしまうという結果を生じさせてしまうのです。同様に日本では、ある地域で災害が生じると、礼儀からその地域に遊びに行くことを控えようとするため、結果としてその地域の経済を悪化させ、その災害地域の住民が不況という2次被害を被ることが多く生じます。

これらはすでに説明した「合成の誤謬」の一例といえるでしょう。国民が多く消費することが景気を良くさせて、国民の所得を高めることになるのです。同様に災害被害を受けた地域を経済的に応援するためには、その地域に多く支出する(積極的に観光に行く)ことが必要となります。 次回は近年話題の行動経済学について説明します。

担当:青野 覚 講師(経済系担当)

★過去の学習コラム

2019年9月30日 (月)

インターンシップの経験をどう活かすのか<後編>

前編はこちらです。


そもそも、今年の夏はインターンシップに参加していないよ!という方もいらっしゃると思います。安心してください。私もそうでした(申し込みはしていたのですが・・・)。

そんな方に勧めたいことが2点あります。

1点目は、公務員になった先輩に話を聞くことです。

大学のゼミやサークルの先輩、中学・高校時代の部活の先輩、親戚でも構いません。仕事上の苦労、やりがいなどを聞くことで、公務員の仕事に対するイメージが湧いてくると思います。

2点目は、余裕のある時期に民間企業の就活を少しだけかじってみることです。そのメリットは、面接の雰囲気に慣れるということだけではありません。民間企業の志望者は、面接が上手な人が多いです(面接で合否がほぼ決まるわけですから、相当な練習を積んできています)。集団面接やグループワークで、その姿を見ることは刺激になると思います。民間企業の就活をしている友人に、面接のコツを聞くのもよいでしょう。

以前のメールマガジンでもお伝えしましたが、近年の公務員試験は面接試験の比重がどんどん高くなってきています。なるべく早い時期から、公務員の仕事に対するイメージを持つこと、面接対策を行うことフ重要性も高まっていると思います。

充実した夏を過ごせたという方も、少し後悔の残る夏だったという方もいらっしゃると思います。少しずつ気候も秋めいて、気が付けば2019年も、あと3か月少々となりました。

2020年に向けて、今から一日一日を大切に過ごしましょう!

担当:元県庁職員スタッフ