伊藤塾おすすめリンク

  • お問い合わせ・受講相談
    伊藤塾各校舎へのお問い合わせ先、アクセスのご案内です。 お気軽にお電話・来校ください。
  • イベント
    ガイダンスや無料体験講義に参加して塾の特長や講座内容、担当講師、試験制度等をより深く知っていただくことができます。
  • メールマガジン
    定期的に学習に役立つ内容を発信しております。
  • 書籍案内
    皆さんの学習に、あるいは学習の合間に。本物の法律家になるために一度は読んでいただきたい書籍が揃っています。

08.講師雑感 Feed

2021年2月24日 (水)

公務員志望者のための経済知識講座(3)~論文試験や仕事に役立つ経済知識~

Event004l


これから定期的に公務員の試験や仕事に役立つ経済知識について説明していきたいと思います。今回のテーマは、前回の続きで、以下になります。

テーマ1 望ましい経済のしくみとはなにか〜新自由主義(市場原理主義)とはなにか〜
 前回は修正資本主義及び福祉国家について説明しました。そして社会を豊かにしていくためには、市場経済による国民の自由な経済活動と市場で生じる問題を解決する政府(公務員)の役割の重要性について説明しました。そしてこの福祉国家にも問題点があり、1980年代ごろに新自由主義(市場原理主義)という考え方が現れたことまで説明しました。
 まず福祉国家の問題点について説明します。戦後イギリスでは、べバリッジ報告で国民に「ゆりかごから墓場まで」政府が国民の豊かな生活を保障するという方針を打ち出しました。これが福祉国家の典型的な考え方です。しかしこの充実した福祉政策は、大きな政府をもたらし予算の増大と市場への過大な負担をもたらし、経済を疲弊させることになりました。イギリスは、戦後の豊かな財源を多くの福祉政策に充てましたが、石油ショック等で経済不況が生じると財源が不足し、また福祉政策を支える税負担を避けるために多くの企業や資本が海外に流出し、イギリス経済を衰退させることになりました。
 このような状況下、1980年代に新自由主義(市場原理主義)思想が台頭してきます。この新自由主義(市場原理主義)は、政府の市場への介入を最小限に抑え、市場経済の機能を最大限に発揮させるべきであるというものです。このような考えは、そもそもイギリスの産業革命当時にアダムスミスが提唱したものであり、市場経済への最大限の信頼に由来するものです。イギリスでは、サッチャー政権が福祉政策は維持しつつも、民営化や規制緩和、税制改革等により市場経済のメリットを最大限に生かそうとしました(サッチャリズム)。これらの政策は、イギリス経済の停滞の原因を取り除き、その後のイギリス経済の復活をもたらしました。しかし失業率や貧困の増大をもたらすことになりました。同時期にアメリカでは、レーガン大統領が規制緩和や減税等のレーガノミクスとよばれる同様な経済政策を実施しています。また日本でも中曽根政権が、規制緩和や国鉄の民営化等の同様な政策を実施しました。これらの新自由主義に基づく政策は、各国の経済を活性化させ、その後の経済成長に貢献しましたが、失業率や貧困の増大等の問題も生じさせました。

 以上のように過剰な福祉主義は、後に過剰な自由主義(市場原理主義)をもたらすことになりました。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉があるように、いずれにしろ行き過ぎた思想は望ましくない結果をもたらすことになると思います。
 望ましい経済のしくみとはなにかをテーマに、これまでの歴史と経済思想ついて説明しました。これを踏まえて、何が「望ましい経済のしくみ」なのか、私なりの結論を次回に説明したいと思います。
伊藤塾講師 青野 覚

2021年2月16日 (火)

公務員志望者のための経済知識講座(2)~論文試験や仕事に役立つ経済知識~

Event004l


これから定期的に公務員の試験や仕事に役立つ経済知識について説明していきたいと思います。今回のテーマは、前回の続きです。

【テーマ1 望ましい経済のしくみとはなにか~修正資本主義とはなにか~】
市場経済(資本主義経済)は、国民の経済活動での競争により、社会全体を豊かにしていく仕組みが備わっています。しかし市場経済(資本主義経済)は、その課題として貧富の格差が拡大してしまう傾向があるという問題点があります。この貧富の格差の拡大を防止する方法として、修正資本主義というものが提唱されることになりました。

資本主義は、国民の経済活動の自由を認めて社会を豊かにすることが目的ですが、貧富の格差拡大や不況等の問題点があります。修正資本主義では、資本主義を基本としつつも、上述の問題点を政府の市場への介入で解決していこうとするものです。

マスグレイブという学者は、政府の役割として3つを挙げています。1つ目は、資源配分政策と呼ばれるものです。これは独占などの国民の経済活動の公正な自由競争を妨げる事態に対して対処するというものです。独占禁止法などは、この政策の典型例です。2つ目は、所得再分配政策と呼ばれるものです。これは、貧富の格差拡大に対して、政府が介入して所得格差を縮小しようとするものです。累進所得税や失業対策、公的扶助等が典型例です。累進所得税は、高所得者に高い課税を行い、その税収を低所得者に対する補助に用いるというものです。失業対策、公的扶助等は、低所得者に対する具体的な政策です。3つ目は、経済安定化政策と呼ばれるものです。経済が不況に陥った場合に、政府が積極的に介入して不況を克服しようとするものです。政によるGOTOトラベルキャンペーン等は、この不況対策に該当します。

重要なことは、政府の介入(公務員の仕事)がなければ、これら市場経済における問題点のある独占や貧富の格差(貧困の解消)や不況は解決されないということです。公務員の仕事が社会にとっていかに重要かつ不可欠であるかがわかると思います。

この修正資本主義の考えを発展させたものが福祉国家という考えです。戦後イギリスでは、べバリッジ報告で国民に「ゆりかごから墓場まで」、政府が国民の豊かな生活を保障するという方針を打ち出しました。
この福祉国家にも問題点がありました。この福祉国家の問題点から1980年代ごろに新自由主義(市場原理主義)という考えかたが現れました。この新自由主義にいては次回に説明したいと思います
伊藤塾講師 青野 覚

2020年10月 9日 (金)

2020年の公務員試験で、思うような結果が出ていない人へ

Event006l


あるオリンピックの金メダリストが、次のような言葉を述べたそうです。 《世の中には、「成功も失敗もする人」と「何もしない人」がいる。 「成功する人」と「失敗する人」に分かれるわけではない。 失敗することも苦しいこともたくさんあるけれど、失敗もしない何もしない人生より、充実しているし楽しい。》

2020年の公務員試験を受験した皆さん、コロナの影響で、試験日が延期になったり試験の内容が変わったり、先行き不透明な中での受験、お疲れさまでした。
お疲れさまって今書いちゃったけど、内定・採用に向けての活動がまだ残っている人は、今できることに全力を尽くしてください。第一志望でなかったとしても、です。そこで働くかどうかは、内定をもらってから考えればよいです。

受験は一段落したが、思うような結果が出なかったという人へ。
結果としては成果が出なかったとしても、受験対策をがんばってやってきた過程においては、様々な学びや気づきがあったはずです。
その過程を通ったことで、今のあなたは、去年のあなたより確実に成長しています。辛くても、前を向いてください。
現在起こっていることは、皆さんの人生の通過点にしか過ぎません。人間万事塞翁が馬、現在失敗と思っていることは、長いスパンで考えたら実は失敗ではないかもしれません。なので、望んだ結果が出なかったことをただ悔やむためだけに過去を振り返るのは、やめましょう。過去を振り返るのであれば、過去の経験から学んだことを確認して、未来に活かすためにしましょう。
担当:内田 太 講師(法律系担当)

2020年7月31日 (金)

学習効果UPのためのちょっとしたコツ伝授します<その5>

Event001l


前回「その4」は、《インプットにはアウトプットが不可欠だから、効率よくインプットするためにも、なるべく早い時期に過去問を見てしまおう!》という話でした。

今回は、
《すべての受験生が、インプット不足のまま本試験の日を迎えることを知ろう!》です。

公務員試験ではたくさんの試験科目があります。どの科目もきちんと勉強してインプットするとなると、1年前後の勉強期間では物理的に終わらない分量になります。学力試験でも資格試験でもなく、就職試験ですから、面接対策にかける時間も必要です。その上、受験生の大多数は、大学の履修科目の勉強、ゼミの発表、アルバイト、サークル活動などなどもあります。
ただでさえ時間は有限なのに、こんな状況なのです。全科目のテキスト・これ完をすべて勉強し、面接対策もバッチリで、時事ネタもちゃんと押さえている受験生なんてこの世にいません。みんなインプット不足のまま、本試験の日を迎えるのです。
ならば、試験は相対評価なので、全部の勉強は終わらない前提に立った上で、優先順位をつけてインプットすることが大事になります。
全部の勉強は終わらない=どの科目も未完成のうちに本試験の日が来ることを前提にしましょう。そして、①過去問で頻出の項目(法律科目なら頻出の判例や条文)をまず優先的に勉強しましょう。筆記試験(面接・人物試験を除く)で合格するためには、過去問でよく出ていて、真面目に過去問を勉強している受験生が解ける問題が解けるようになっていればよいのです。何が頻出の項目なのかは、伊藤塾の講義で指摘されているはずです。
これに対して、②過去問であまり出ないところ、真面目に過去問を勉強している受験生の大多数が解けない問題は、仮に出題されても正答率の低い合否に影響のない問題になります。勉強の優先順位を下げましょう。もし勉強するとしても、後回しにしましょう。
合格するために勉強すべきです。全部を勉強しようという意気込みがあること自体はOKです。しかし、物理的、時間的に不可能なこと(全部を勉強する)を目標にするのではなく、合格点を取り内定をもらうために、何をどこまで勉強すればよいのかを、冷静に判断すべきです。

《どの科目も未完成のうちに本試験の日が来ることを知ろう!
そして、全部の勉強は終わらない前提に立った上で、優先順位をつけてインプットしよう!》

担当:内田 太 講師(法律系担当)

2020年7月19日 (日)

<学習コラム>財政改革の必要性 財政の現状

Event002l


ニュースでも財政改革の必要性について話題になることが多くあります。政府は消費税の増税は、財政改革に必要だと説明しています。そこで今回は日本の財政の現状を見たいと思います。

令和1年度(平成31年度)の国の予算は約101兆円であり、初めて100兆円の大台に達しました。この予算はどのように賄われているのでしょうか。まず税金による収入が62兆円で予算全体のわずか61.6%(6割程度)を占めています。残りのほとんどは公債金(借金)による収入の32.6兆円であり、予算全体の32.2%を占めています。このように日本は現在国の予算の3割程度を借金で賄っていることになります。

次に令和1年度末で国債(国の借金)の残高は、約928兆円であり、これは対GDP(国民所得)比の158%に及びます。すなわち国の借金残高は、国民全体の年収の1.6倍に及ぶということです(国と地方の長期債務残高は、約1122兆円で対GDP比198%となります)。この国債残高は主要先進国で一番多い状況です(次回につづく)。

担当:青野 覚 講師(経済系担当)

2020年7月 9日 (木)

<学習コラム>低金利政策と所得格差拡大

Event002l_2


現在日本は、景気対策として低金利政策を25年近く継続しています。 しかしノーベル経済学賞受賞者のステグリッツ教授は、低金利政策は所得格差を拡大する傾向があると主張しています。 すなわち25年近く継続している低金利政策が所得格差拡大の一要因になっているため、格差是正のためには低金利政策をなるべく早期に終了すべきであるということです。

高所得者は、収益率の高い株式等に投資できますが、低所得者はその余裕がなく、せいぜい預貯金ができるだけです。株式等の収益率は平均で約5~7%程度であり、預貯金の利息が約0%ならば、毎年収益格差が約5~7%程度拡大することになります。これが25年継続するとかなりの所得格差が生じることになります。

景気対策としての低金利政策が所得格差を助長しているという問題があるということです。しかし今金利を引き上げると経済(景気)に悪影響を及ぼす可能性があり、安易に引き上げられないという状況にあります。ただし長すぎる低金利自体も経済に良くないという主張もあるため、なるべく早期に正常化する(適正な金利水準に戻す)必要があります。

次回は財政改革について説明します。

担当:青野 覚 講師(経済系担当)

2020年7月 7日 (火)

気持ちを切り換える!

Event006l


皆様こんにちは。 7月5日に国家総合職の1次試験が行われました。 翌日には正解も発表されて、自己採点をしている方も多いのではないでしょうか。 自分の採点が正しいのかとか、自分以外にも採点してみてほしいということであれば、伊藤塾のマイページから採点サービスをご利用ください。

公務員試験の場合には、併願している人も多いので、心の整理をする間もなく次々に試験日がやってきます。
そのときに気をつけなければならないのは、「うまくいっているときは勢いにのる。うまくいかないときは割り切る」ということです。

特にうまくいかないときは、いかに前の試験のことを引きずらないかが大切です。

当たり前のことですが、試験というのは答案用紙に記入したことが全てです。
そこまでに、どういう経緯で受験日を迎えたかということは一切関係がありません。

「前の試験では…。」という気持ちを持ち込んでハンデを背負いこんでしまうのは自分であるということに注意しないといけません。

2003年のプロ野球開幕戦「読売対中日」の試合で、中日は鮮やかな逆転勝利を収めました。
あの試合のアレックス選手のバックホームはすさまじかったですね。同じ試合のペタジーニ選手のバックホームは…(以下略)
読売からすれば当時絶対的なエースだった上原投手で開幕戦を落としたのだから、ショックは大きかったと思います。

その試合後の原監督のコメントが「勝てば130分の1以上だと言いたかったけど、負ければ130分の1だと思いたいね」というものでした。

「以上って言うと130分の1も含まれるんだけど・・・」というツッコミはさておき、これはうまくいかないときの心のあるべき姿を表しているものだと思います。

「それは分かっているけど難しいんだよ」と思われるかもしれません。
であるならば、あなたが伊藤塾の塾生なら、伊藤塾に連絡をして何でもいいから心境を話してみてください。
不安であったり、愚痴であったり何でも構いません。それも含めてアドバイスを送ります。

とにかく1つの結果に対して、実際以上の意味を持たせるのも、そうしないのも自分自身であるということは、試験期間中には意識してほしいと思います。

今後も試験は続きますが、まずは体調を万全にして、心も体もベストコンディションで臨めるようにしてください。

皆様からの良い知らせを待っています。

伊藤塾 公務員試験科 久木田

2020年6月30日 (火)

来年受験のみなさんへ―勉強する科目の選択について―

Event001l


 来年受験予定のみなさんのうち、1年コースのみなさんは、この4月前後から学習が始まっています。複数年コースのみなさんは、憲法・民法・行政法・数的処理などの基幹科目については、昨年以前から学習をスタートさせてきました。いずれのコースのみなさんにおいても、これからは伊藤塾で勉強する科目が本格的に増えていきます。そこで、この時期に一言アドバイスしておきたいと思います。

 カウンセリング等でみなさんから結構聞かれることとして、「どの科目を勉強したら良いのか?」というものがあります。これに関連して、みなさんに大前提として言っておきたいのは、公務員試験は「満点を取る必要がない」ということです(1次試験は、7割程度取れればまず大丈夫)。これが意味しているのは、「伊藤塾が提供しているすべての科目を勉強しなければならないということはない」ということであり、また「試験で課される科目すべてを勉強しなければならないということはない」ということです。

 伊藤塾から続々とテキストや『これ完』が届くと、「こんなに大量の勉強が必要なのか」と思ってしまい、気後れすることもあるかもしれません。しかし、そのように感じる必要は、まったくありません。結局、「科目(あるいは科目の中の範囲)をある程度チョイスして、それを勉強すればよい」ということなのです。多大なエネルギーを割いてなんでもかんでも勉強しなければならないということは、まったくないのです。

 基本的には、チョイス候補は、冒頭で挙げた基幹科目や受験予定先で問題数が多い科目、大学受験等で勉強したことのある科目などになります。ただ、実際には、みなさんの併願戦略等によって、科目のチョイスの組み合わせは様々なものになりえます。もし、自分で科目選択に迷いが出たり、併願先の組み合わせによってどの科目を勉強していったらよいのか分からなくなったりしたら、ぜひカウンセリングを利用してください。私たち講師・スタッフが、みなさん一人一人の状況に即しながら、アドバイスしていきます。

担当:松田圭介講師(行政系担当)

2020年6月29日 (月)

本試験への心構え~「公務員」を目指すみなさんへ~

Event006l_2


みなさんご存知のように、ようやく、延期されていた公務員試験の本試験日程が確定してきました。また、本来であれば2次試験に課されていたものがカットされたり、あるいは配点が変わったりもしています。このように、今年度に限っては、本試験がイレギュラーな日程や内容になっています。

みなさんは、4月5月から始まる予定だった1次試験を念頭に置いて、試験対策を進めてきたことと思います。それが今年はいつになるのかもわからないという状態が続き、そして2次試験等も含めてようやく決まったとはいえ、当初予定よりも2カ月も3カ月も遅くなりました。不安感や「試験日待ち疲れ」のようなものが起こっても、不思議ではないと思います。

確かにそれはそうです。不安になり、そして疲れたと感じるのも、ある程度仕方ないと思います。しかし、今、あまりに心配したり、「やる気にならない」という状態になっていたりしては、いけません。みなさんは、何のために公務員になろうとしていますか。ぜひ、初心を思い出してください。

みなさんは、「国民のため/市民のため/住民のため」に公務員が存在していることを知っています。「国民のため/市民のため/住民のため」に仕事をしている近い将来の自分を、ぜひ思い浮かべてください。そして、これまでどおり、伊藤塾テキストと『これ完』で勉強してきた内容を復習し、志望動機等も固めていってください。自分のやるべきことをやっていき、そして本試験を迎えましょう。

担当:松田 圭介 講師(行政系担当)

2020年6月17日 (水)

<学習コラム17>最低賃金の引き上げは必要か

Event002l_2


最低賃金の引き上げは必要か① 20/6/10 メルマガ「公務員の道標」より

貧困対策の一環として最低賃金を引き上げるべきであるという主張が近年注目されています。実際に日本やイギリス、韓国等で近年最低賃金が引き上げられています。最低賃金の引き上げに対しては、経済に悪影響を及ぼすという反対意見と、良い影響を及ぼすという賛成意見があります。

Keizaigaku


まず労働市場が完全競争である場合、最低賃金の引き上げは経済に悪影響(失業の増大等)を及ぼすと主張されます。
まず労働市場が完全競争になるためには、企業や労働者が多数いて対等な立場で雇用契約を結べる状況が必要です。この完全競争の場合、図の点Eで均衡して賃金がW、雇用量がLに決定されます。このとき総余剰(社会の豊かさの指標)が△aEbの面積で最大になります。ここで賃金をW′に引き上げると、市場均衡が点cとなり、雇用量がL′に減少(=失業の増大)してしまいます。また総余剰は台形acFbの面積となり、余剰が△cEFだけ減少してしまいます。このように労働市場が完全競争である場合、最低賃金の引上げは、雇用量を減少(=失業を増大)させ、余剰(社会の豊かさ)を減少させてしまうため好ましくないことがわかります (次回につづく)。


<学習コラム>最低賃金の引き上げは必要か② 20/6/17 メルマガ「公務員の道標」より

次に労働市場が買い手独占である場合、最低賃金の引き上げは経済に良い影響(失業の減少等)を及ぼすと主張されます。

0624


労働市場が買い手独占とは、労働者より企業の交渉力が強く、企業に有利に雇用契約が結ばれる場合です。
この場合には、賃金が完全競争の場合より低いWに決まります(均衡は点F)。このときの総余剰は台形acFbの面積となります。この場合には、最低賃金を完全競争の場合と同水準のW′まで引き上げれば、市場均衡は点Eとなり、雇用量がL′に増大(=失業の減少)し、総余剰(社会の豊かさ)が△cEFだけ増加します。
通常、最低賃金で働く労働者の市場での影響力は弱く、労働市場が買い手独占である可能性は高いと考えられます。この場合は最低賃金の引き上げは経済に良い影響(雇用の増大=失業の減少)を及ぼすでしょう。
しかしある研究によると最低賃金は適正水準に決定されているという報告もあり、買い手独占市場であるという確証はありません(次回につづく)。


<学習コラム>最低賃金の引き上げは必要か③ 20/6/24 メルマガ「公務員の道標」より

前回までは最低賃金の引き上げの今の経済への影響のみを考慮する「静学分析」で考えました。

今回は、将来の経済への影響も考慮する「動学分析」をしたいと思います。この動学分析では、最低賃金の引上げは経済に良い影響を及ぼす可能性があると近年主張されています。

政府が毎年一定割合で最低賃金を引き上げていくと決めた場合、企業は何も経営努力をしないと赤字により倒産してしまいます(あるいは赤字でなくとも利益が減少する)。
そこで企業の経営者は、倒産させないために経費削減や生産体制の見直し等により、賃金が引き上げられても赤字が生じないように経営努力を行うと考えられます。このように最低賃金の引上げは、企業に経営の革新(イノベーション)を促し、経済に良い影響を及ぼすと考えられます。実際にイギリスは、毎年5%最低賃金を引き上げた結果、経済に良い影響があったと報告されています。

このように最低賃金の引上げは、貧困対策だけでなく、景気対策にも有効である可能性があるのです(次回につづく) 。


<学習コラム>最低賃金の引き上げは必要か④ 20/7/1 メルマガ「公務員の道標」より

イギリスでの最低賃金の引き上げは経済に良い影響を及ぼしました。
他方で韓国では、一度に16%(2年間で29%)もの最低賃金の引上げを行いました。しかしこのような急激な賃上げは、韓国で多い小規模自営業者が賃金を払えずに雇用者を解雇したため、失業者が増加し、経済に悪影響を及ぼしました。

ある研究報告によると、一度に12%を超える最低賃金の引上げは経済に悪影響を及ぼすとしています。イギリスは5%の適度な賃上げであったために良い影響を享受したが、韓国は急激な賃上げであったために経済に悪影響を及ぼしたのです。両国ともに貧困対策としての最低賃金の引上げでしたが、経済理論に反する大幅な賃上げを断行した韓国は経済政策を失敗したといわざるをえません。韓国経済は、2019年1月~3月に10年ぶりのマイナス成長に陥り、失業率も急増(若者の失業率はなんと25%、4人に1人が失業)しています。

なお日本は近年、毎年3%程度の最低賃金の引き上げを行なっています。このような適度の賃上げは、上述したように日本経済に良い影響を及ぼす可能性があると思います。経済の知識のない政治家(大統領)は意外と多く、経済の知識がある行政官のアドバイスが国益にとってとても重要だとわかります。
次回は低金利政策と所得格差の関係について説明します。

担当:青野 覚 講師(経済系担当)


前回の学習コラムもあわせてどうぞ♪