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2019年9月13日 (金)

「覚えることを減らす」という発想

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みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

伊藤塾では7月の本試験後から年内の期間を「実力養成期」と位置付けていますが、今はその中間に位置付けられ、多くの受験生が改正民法をはじめとしたインプットの学習に重点を置いている時期だと思います。今回は、インプットの学習のコツについてお話したいと思います。

〔1〕 知識の詰め込みでは点数が伸びない

司法書士試験は、記憶すべき知識量の多さが特徴であり、何かと覚えることが多い試験です。しかし、だからといって単に知識を詰め込んで繰り返しても点数は伸びないものです。そこで大事になるのが「覚えることを減らす」という発想です。

すなわち、あらゆる知識を頭に叩き込もうとするのではなく、覚えることを減らすことによって記憶の負担を軽減させることで、知識を吸収できる幅を広げることが大事です。

〔2〕 制度趣旨の真価

そして、この発想のカギとなるのが「制度趣旨」です。法律を学習する上で制度趣旨が重要であることは実際どこでも言われることですが、記憶面での効用としては、「記憶が定着しやすくなる」程度に思われているかもしれません。しかし、制度趣旨をうまく活用すれば、上記の通り、「覚えることを減らす」ことができるのです。

では、どのように制度趣旨を活用すればよいのか。ポイントは次の3点です。

※ 具体例として内容的な話を入れていますが、あくまで学習方法の例として示しているので、軽く読んでください。

(1) 核心から攻める

個々の知識について理由付けをするのではなく、制度の核心となる考え方を押さえてしまえば、そこから複数の知識に繋げて一網打尽に記憶することが可能です。この制度の核心とは、その多くが実はテキストの「意義」の箇所に記載されているような、一見当たり前の考え方です。しかし、当たり前すぎてそこで終わってしまい、それぞれの知識に結び付けられていないことが多いように思います。

そもそもその制度自体が何のためにあるのかを捉え、個々の知識を学習する際に、常に意識するようにしましょう。

〔具体例 ~不動産登記法・所有権保存の登記の申請適格 ~〕

端的に言えば、所有権保存の登記の申請適格の核心は、「所有権の公的立証」にあるといえます。所有権保存の登記は所有者の単独申請でするため、虚偽登記を防止する観点から、法74条1項による所有権保存の登記の申請適格を有する者は、登記官が公的な文書により確実に所有者であると判断できる者(e.g.表題部所有者の相続人その他の一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者)に限定されているのです。

ここから考えれば、次の知識が覚えやすくなります。

① 表題部所有者が所有権の一部を譲渡した場合,表題部所有者の単有名義の所有権保存の登記を申請した後,譲受人への所有権一部移転の登記を申請しなければなりません(登記研究486号)。この場合、譲受人は所有権の公的立証ができる立場になく、所有権保存登記の申請適格はないからです。

② 法74条1項1号後段における「表題部所有者の相続人その他一般承継人」に,包括受遺者は含まれず、包括受遺者は自己名義の所有権保存の登記を申請することができません(登記研究223号)。包括受遺者であることは公的な文書で立証できない場合(e.g.自筆証書遺言)があり、所有権の公的立証ができるとは限らないからです。

③ 法74条1項2号における「判決」は、給付判決・確認判決・形成判決のいずれでもよく、判決の主文でなく判決理由中で所有権が確認されているものでもよいとされています(登記研究170号)。判決による登記における「判決」と異なり、執行力を有している必要はなく、これらによっても所有権の公的立証が可能だからです。

このように、「所有権の公的立証」という核心を掴んで方向性が定まれば、あとは①~③といった知識を覚えるのはそう難しくないでしょう。

(2) パラレル思考を駆使する

「パラレル」とは「並列・並行」を意味し、法律の世界でも「パラレルに考えて…」といった表現でよく用いられます。

ここでは、他の制度と並行して(同様に)捉える思考を「パラレル思考」と呼んでいきます。これを駆使すれば、構造が理解しやすくなるのはもちろん、「あの制度と同じ考え方」と押さえればいいだけなので、覚えることをぐっと減らせることができます。特に今回の民法の改正では、制度間の規定が整理されているので、このパラレル思考が活用しやすいと思います。

構造が似ている制度に関しては、このようにパラレル思考を駆使して関連させていくとよいでしょう。

〔具体例 ~民法・贈与と使用貸借と寄託 ~〕

①書面によらない贈与(口約束の贈与)があった場合、各当事者は、履行が終わった部分を除いて、その契約を解除することができるとされています(民550条)。これは、軽率に贈与の意思表示をしてしまった当事者を救済する趣旨です。

これとパラレルに考えて、②書面によらない使用貸借があった場合、貸主は、借主が目的物を受け取るまでは、契約の解除をすることができます(民593条の2)。さらに、③書面によらない無償寄託の受寄者は、寄託物を受け取るまでは契約を解除することができます(民657条の2第2項)。

このように、①の「書面によらない贈与」の考え方を押さえておけば、②③も難なく覚えることができます。

(3) 当たり前のことは覚えない

制度の目的(仕組み)から考えれば当たり前のことに関しても覚えるべき知識と捉えてしまうと、無駄に覚えることが増えて効率が悪いといえます。

この「当たり前のこと」は意外と多く、一度納得してしまえば、覚える必要がなくなるので、自分の中で「当たり前でしょ」と思えた知識は、あえて覚えないように意識するとよいでしょう。

〔具体例 ~民法・代価弁済と抵当権消滅請求 ~〕

例えば、代価弁済と抵当権消滅請求に関して、次のような比較がよくされます。

代価弁済 第三取得者が抵当不動産の所有権等を『有償』で取得したことが必要
抵当権消滅請求 第三取得者が抵当不動産の所有権を取得したことが必要(有償・無償を問わない

抵当不動産の所有権を無償で譲り受けた者に関して、抵当権消滅請求の可否を問う問題の出題実績は過去にもあるため(H11-11-ア)、ここは押さえるべきポイントといえるでしょうが、各制度の仕組みから考えれば当然のことです。

代価弁済は第三取得者が代価(本来は売主に支払うべき売買代金)を抵当権者に弁済するものであるところ、当然代価が存在する必要があるため、有償で取得したことが要求されますが、抵当権消滅請求は第三取得者が代価とは無関係に提示した任意の額を提供して抵当権を消滅させるように働きかけるものですから、無償で取得した場合であってもよいことになります。

このように、制度の目的(仕組み)から考えることで、上記の表に挙げられている知識は覚えなくて済むでしょう。

〔3〕 最後に

上記のように、制度趣旨は個別的に押さえるのではなく、それを各知識に結びつけることが大事です。

ただ、制度趣旨からそれぞれの知識に結び付けることを自主的に行うのは難しい場合もあります(特に登記法)。私の担当する「これでわかる!基礎完成講座シリーズ」で使用するテキストでは、制度趣旨の記載が充実しており、「覚えることを減らす」発想に基づいた講義を行っていますので、興味のある方はぜひご検討ください。科目別受講が可能なので、根本から立て直したい苦手科目の克服にもお勧めです。

<<<9/23(月)に主要科目を配信開始!髙橋智宏講師による「これでわかる!基礎完成講座シリーズ」はこちら

今回の記事は以上となりますが、この記事がみなさんの学習における記憶の負担軽減に繋がれば、うれしい限りです。

それでは、一緒に絶対合格に向けて頑張っていきましょう!

YouTube: 司法書士試験の突破口~これでわかる! 基礎完成講座 シリーズ~

伊藤塾司法書士試験科講師 髙橋智宏

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