そもそも思考法2020~制度趣旨(そもそも)に立ち返り,未知の問題を撃破する~
本試験日の9月27日まであと1か月弱となりました。
ここからの勉強で大切なのは、「やるだけのことはやった」というヤル気を纏った自分を仕上げ、本試験に送り出すことです。 中途半端に終わることのないように、今一度学習計画を見直し、本試験までに確実に終わらせられる分量に調整を行いましょう!
今回は、以前このブログで紹介した現場対応法「そもそも思考法」を、新たな練習問題を素材にして改めてご紹介したいと思います。
本試験においては,自分の知っている知識だけが出題されるわけではありません。もちろん,自分の知らない知識の問題は分からなくてもしょうがないといえますが、中には現場対応で解ける問題もあります。それは「現場思考力で解く」や「推理で解く」という言葉で片付けられがちですが、「そう言われてもどう考えればよいのか分からない」というのが、多くの受験生の心情ではないでしょうか。
そこで、現場思考の具体的な方法として、「制度趣旨に立ち返って未知の問題を撃破する方法」をお伝えします。
「制度趣旨に立ち返って未知の問題を撃破する」とは、自分の知っている知識の制度趣旨(そもそも)に立ち返り、そこから引っ張って未知の知識の問題の答えを出すというものです。私はこれを「そもそも思考法」と呼んでいます。
「そもそも思考法」の解法プロセスは以下の3ステップです。
〔STEP1〕 関連知識・似たような知識をもってくる。
〔STEP2〕 その知識のそもそも(制度趣旨)を思い出す(知らなければ現場で考える)。
〔STEP3〕 その制度趣旨を問題に当てはめる。
それでは実際に練習問題を通して実践例を紹介していきたいと思います(以下の内容は現場思考法の実践例を紹介であり、学術的な内容の解説ではありません)。
〔練習問題〕
「共同相続人の一人が,被相続人が作成した遺言書に欠けていた押印等の方式を補充した場合でも,被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でしたものであるときは,当該相続人は,相続人となる資格を失わない。」
【〇】(最判昭56.4.3)
ここでは、上記の問題で問われている判例知識を知っていたかどうかは重要ではありません。仮に知っていた方も、以下のそもそも思考法のプロセスに沿って検討していきましょう。
〔STEP1〕 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者は,相続欠格により相続権を失う(891条5号)。
〔STEP2〕 『そもそも』これは、遺言に著しく不当な干渉行為をした相続人に対して制裁(ペナルティ)を与える趣旨である。
〔STEP3〕 法形式を整える趣旨で遺言に手が加えられた場合は,ペナルティを与えるべきではないから,相続欠格には当たらない。
もちろんこれは現場での思考であるため、100%正答ができるわけではありませんが、時間的余裕がある午前の部では特に有効な解法となります。
なお、そもそも思考法では「深読みしすぎないこと」も大事です。そもそも思考法で答えを出したが、深読みしてしまってその反対の答えにして間違えてしまった、ということがないように、深読みをせずにシンプルに答えを出すようにしましょう。
とにかく、迷ったら制度趣旨(そもそも)に立ち返って考える。
ぜひ参考にしてみてください。
伊藤塾司法書士試験科講師 髙橋智宏