伊藤塾司法書士試験科HP

伊藤塾おすすめリンク

  • お問い合わせ・受講相談
    伊藤塾各校舎へのお問い合わせ先、アクセスのご案内です。 お気軽にお電話・来校ください。
  • イベント
    ガイダンスや無料体験講義に参加して塾の特長や講座内容、担当講師、試験制度等をより深く知っていただくことができます。
  • メールマガジン
    定期的に学習に役立つ内容を発信しております。
  • 書籍案内
    皆さんの学習に、あるいは学習の合間に。本物の法律家になるために一度は読んでいただきたい書籍が揃っています。

伊藤塾校舎ブログ

« そもそも思考法2020~制度趣旨(そもそも)に立ち返り,未知の問題を撃破する~ | メイン | 本試験当日をどう過ごすか »

2020年9月 3日 (木)

令和2年度認定考査を終えて

Img20190703173341743906

令和2年度認定考査を受験された皆様、お疲れさまでした!

感染症拡大の影響があちこちで出る中、勉強をするのはかなり大変だったと思います。
また、試験が延期される中、気持ちを維持するのにも苦労したことと思います。

さて、試験の内容として率直に受けた印象としては、
①お!結構、新債権法の内容について踏み込んで聞いてきたな!
②やった!今年も模擬演習の問題で出題していたところがかなり聞かれている!
【以下参考:予想的中論点】
◇売買を前提とする訴訟物・請求の趣旨・請求原因事実(新作2問目)
◇契約の内容に適合しないことを理由とする抗弁(新作2問目)
◇代理構成を含む相殺の抗弁(重要1問目)
◇金銭消費貸借の要件事実(重要1問目)
◇契約内容不適合の評価障害事実の再抗弁(新作2問目)
③要件事実部分は解きづらい問題だが、それ以外の難易度を落として救済しているな。
 (ただし、第3問は難しかったです。)

第1問の小問⑴~⑶(訴訟物・請求の趣旨・請求原因事実)までは、
目をつぶっていても書けたかと思います。
問題は、小問⑷~⑹の抗弁~再々抗弁まで。
再々抗弁まで聞かれることが殆どないこともあり、
この時点でドキッとしたのではないかと思います。
そのうえ、新債権法を真正面から問う問題。

〔言い分〕の分量がX、Y共に1ページ程度と少なめに設定されていることが
問題の難易度の高さを表しています。
つまり、問題文中のヒントが少なく、
また、検討に時間を要することを見込んで
あえて不要な「事情」相当の記述を減らしているものと推察できます。

抗弁としては、
・契約の内容に適合しないことを理由とする解除の抗弁
・代理構成を含む貸金債権を自動債権とする相殺の抗弁
の2つを考えることができます。
なんとなく「表見代理?」というのがよぎったかも知れませんが、
Xが基本代理権を与えた事実や、X自身が代理権を与えたとYに伝えていた事実は
存在しませんから、表見代理の構成は成り立ちません。
Bに代理権の存在を確認したところ、Bが「間違いない」と言った
という事実が混乱を誘っているだけです。

抗弁は、模擬演習の予想がかなり当たっていたこともあり
過去問に加え、模擬演習編の新作問題、重要問題をしっかり消化していた方は
その応用で相当程度書けたのではないかと思います。
模擬演習では、契約の内容に適合しないことを理由とする「同時履行」の抗弁を
聞いていましたが、これに「解除」の要件事実を組み合わせれば形になります。

再抗弁として考えられるのは、
・契約内容不適合の評価障害事実の再抗弁
・代理権濫用の再抗弁(「悪意」構成+「知ることができた〔有過失〕」構成)
を考えることができます。いずれも新債権法の影響を受けています。
評価障害事実は、「ドリフト走行」のくだりから作文すれば良いのですが、
代理権濫用は焦ったかも知れません。
過去に出題実績がなく、また、記述を省略している書籍も多いからです。
ただし、冷静に考えることができれば、新債権法で条文化される前から、
判例法理として確立していた論点ではあります。
効果が「無効(93条ただし書類推適用)」から「無権代理行為とみなす(新民107)」
に変わったということはありますが、要件事実の構造は変わりません。
すなわち、
➊代理人が自己又は第三者の利益を図る意図で当該意思表示をしたこと
➋相手方が➊につき悪意又は有過失であること
の2点です。
過去問未出であることも考慮してか、
〔Xの言い分〕7では、「Aは、私の利益のためではなく、A自身の利益のために」
〔Yの言い分〕8でも、「Xは…Aは自分自身のために30万円を借りた」
と繰り返し、かつ、わかり易い表現で書かれています。
そのため、不安ばかりが先行しつつも、何とか形付けることは出来たかも知れません。

再々抗弁として考えられるのは、
代理権濫用の再抗弁で示された過失の評価根拠事実に対する評価障害事実です。
評価根拠事実に対して評価障害事実をあてる
の構造は、抗弁・再抗弁のレベルでも登場しています。

小問⑺は、新法を前提とした「承認による時効の更新」(新民152)
の理解を問うていますが、難易度は低く得点したいところです。
また、小問⑻も「事実認定」レベルの問題というよりは、
「認否」レベルの「不知」「沈黙」がどう作用するかを聞いている基本問題です。
第2問の業務範囲の問題も繰り返し問われている基本でしたから、
サービス問題といっても良いと思います。

第3問はかなり難しかったと思います。
Yが①Aに対する無権代理人の責任を追及することは、
②対Xとの関係においてAを代理人として成立した貸金債権をもって相殺主張する
という態度と矛盾するため(①②は両立しません。)、
①の時点で②の主張をしていないものとして、
Xの同意を前提に別事件として受任してもよい、との論述も筋が通るようにも思えます。
しかし、「第1問の設例において」が問題の前提であり、
②の主張が第1問の問題文中では現になされている以上、
これを無視することはできません。
そうだとすれば、①はXY間の訴訟におけるYの抗弁主張とも密接に関連しており
(①が棄却されればYとしては②の主張を維持する。)、
司法書士QがYの依頼を受任することは相当ではありません。
平成30年第17回第3問で、
無権代理人に対する責任追及を視点に含む問題が出題されており、
また、平成28年第15回第3問では、
形式的には主体を異にする別事件だが
実質は密接な利害関係があるから受任できない、
という視点を含む問題が出題されています。
このあたりの感覚を応用して何とか形づけることができれば御の字、
といった問題だったと思います。

昨年の問題は、難易度としてはそれなりに高かったにも関わらず
認定率はかなり高く、私も良い意味で予想を大きく外したのですが、
今年も高い認定率が維持されることを祈っています。
試験、お疲れ様でした!

伊藤塾専任講師 坂本龍治